第13章 青い髪、赤い血
「でも、まだ未熟者の俺より、松陽先生が…」
弟子の俺より、それに気付いている松陽先生がやるべきでは?
「私はアナタよりも年長者な分、アナタ達の前からいなくなる日はやがて訪れます。ですので、アナタにお願いしておきたいのです」
松陽の真剣な眼差しから、桂は目を反らすことができなかった。
こんなに先生から直接お願いされたのは初めてで、緊張した。
松陽は桂にプレッシャーをかけてしまい、ハッとなった。
「すいません。少し圧力をかけてしまいましたね」
先生らしくないシリアスな展開だったと反省した。
「ただ君はいつも通りでいいんです。君は今までも、銀時や晋助を手助けしてくれましたから。ただ君は、同じように雅の力になってくれればいいんです。君はそういう配慮のあるところが強みですから」
松陽は桂の良いところをよく見ている。
皆を導くリーダーとしての素養が備わっていると思っていた。
桂自身も、松陽に認められていると思い、自然と緊張から喜びへと変わって微笑んだ。
「分かりました。雅が銀時達とは別の意味で危なっかしいこともよく分かりました。俺に出来ることをこれからも最善に尽くしたいと思います」
「ありがとうございます」
お茶菓子とお茶を全て平らげ、桂は一礼してから部屋を出た。
小太郎は皆の安全を誰よりも第一に考えてくれる、優しい子です。
傲慢に己の力を見せつけるだけが強さではない。
その例が、彼です。
きっと彼は、銀時や晋助とは違う形の、立派な侍になれます。
そして雅もいつか、己の侍をきっと…
桂は廊下を歩いていて、ふと外に目を向けたら、庭に雅がいることに気付いた。
(雅!)
茂みの方で低い姿勢で背中をこちらに向けていた。
(何をしているんだ?何か落としたのか?)
松陽に頼まれて早速、彼女の元へ行った。
何か困っていそうだから、力になろうと。
「雅」
「!」
雅はゆっくり後ろを振り向いて立ち上がった。
「小太郎…」