第13章 青い髪、赤い血
松陽が雅と……
「風呂に入るよう言っただけですよ。私は何もしてませんよ」
何か勘違いしてるのは、表情でバレバレだった。
「そ、それで、雅はケガは…!」
「安心してください。でなければ、今日の授業に出したりしませんよ」
桂は入れてくれたお茶を飲んで、ひとまず落ち着こうとした。
未だに彼女のあの姿のことを聞けなくてソワソワした。
何で雅の着物は、血だらけだったのか。
「君には少し、先生の情けない姿をお見せしてしまいましたね」
「!」
松陽は後ろ頭に手をやって、昨日のことを恥ずかしがった。
松陽は昨晩、雅を抱き締めて涙声で「無事で良かった」と何度も言い聞かせていた。
「いえ…心配するのは当然ですよ。さすが生徒想いの我らの先生と感服しました」
「そうですか。それは嬉しいですね」
とは言っても、正直桂は未だに引っかかっていた。
暗くてあまり分からなかったが、松陽が泣いているところを初めて見た。
松陽があれほど雅を心配するのは…
「……松陽先生にとって、やっぱり雅も特別なのですか?銀時と同じように」
「!」
松陽は過去の記憶を思い起こした。
雨の中、やけ崩れた寺の廃墟で、銀時が見つけた1人の女童。
((おや…あれは……))
着物は血まみれになりながらも、女童自身は無傷でいた。
しかしあの時は雨だったから血は自然に洗われて赤色は褪せてまだマシだった。
その時の彼女の瞳は、きれいな翡翠ではなく、血の色によく似た赤だった。
「先生?」
桂の声で松陽は我に返り、ニコッと微笑んだ。
「そうですね…確かに彼女は銀時に似ています。ですが今思えば、2人は似てもいて“逆”でもありますね」
「“逆”、ですか?」
松陽はお茶を二口ほど飲んでから、話した。
「銀時はその身を“護る”ために、孤独に生き、剣を持っていたとするなら、あの子はその逆。
その身を“殺す”ために、孤独に生き、剣を持っていたのです」
「!!」
桂は持っていた茶菓子を机の上に落としてしまった。
人は一生において多くの困難の道を進み、成長するものです。
ですが彼女の場合、それらを経験するには若すぎました。
苦難を敷き詰め過ぎたことで、成長の1本道が折れ曲がり、歪な形になってしまった。