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君想ふ夜桜《銀魂》

第13章 青い髪、赤い血



「……晋助。アンタに…頼みがある」

「頼み?」

雅は何やら言い出しづらそうで、顔を曇らせて伏せた。

「?」

「もし私が………いや違う。三郎をまたしばらく貸してくれる?」

(三郎?)

高杉率いる鬼兵隊のメンバーの1人で、機械技師の男だ。

雅は医療道具を仕入れるのは、商人の辰馬に頼むやり口だけではない。

独自で考え出した物を、三郎に頼んで作ってもらうこともある。

電気メスや心電モニター、血液吸引器など、その種類は様々。

特に電子系の機械が強い三郎は、雅にとって辰馬と同様の重要人物だ。

「本人には事前に伝えている。あとはアンタが許可してくれれば」

「ああ。それはいいが…」

雅が違うことを言おうとしたように見えたが。

「恩に着るよ。じゃあ私は何をしようか…」

「礼なんていらねーよ」

「まあいい」

高杉は部屋を出て、雅は部屋を閉めた。

最後の部屋訪問は、こうして終わった。


「……」

雅は今頃になって落ち着きがなくなり、落ち着こうと布団の上に寝転がった。

落ち着かないのは無理もなかった。

何せ自分の出生を話したのは、高杉が初めてだったから。

いや。それでも今の内に話しておきたかったのも事実だった。

この先の戦で、いつかはバレるのだから。

幕府に近付けば近付くほど、母親の名家の存在を知られる。

(……母の血族は、“武器商人”で名を馳せている名門だ)

この戦は奴らにとっていい儲け話で、幕府は奴らの客でもあるから、お互い良好で密接な関係にある。

つまり、私たち反乱軍を殺しまくっている幕府の武器全ては、私の血族によって用意されたもの。


私の仲間を殺しているのは、私の氏族だ。


本当に皮肉な話だ。間接的とは言えど、私の一族が私たちの仲間を殺して、それを私が治しているなんて。

私がこの戦で剣を取るのは、責任を感じていたからかもしれない。

破門されているとはいえ、血のつながりがあるから。

母さんは昔言っていた。武器も戦争も嫌いだから、あそこを抜け出したって。


「……言えるわけ…ないよな…」

さっき、私が高杉に言おうとしたこと。

「私の一族を代わりに殺してくれ、なんて。言えるわけないな…」

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