第13章 青い髪、赤い血
「!」
この時、何で雅が俺に話をしてくれたのか分かった。
この戦で俺たちが勝てば、新しい国を築き上げることができるだろう。
俺はヅラほど殊勝じゃねェから官軍なんて椅子には興味はねェが、ヅラは新しい世を作る気があるらしい。
新しいものができることは、すなわち、古いものを捨てることだ。
つまり俺たちが、それまで国を築いた奴らを粛正することになる。
その古いものの中に、幕府側に加担している雅の一族がいるっつーことは……
(つまり、雅は自分の一族を……)
俺は正直、考えたくはなかった。
雅が天人ではなく、よりにもよって自分と血のつながりがある奴らを始末することを。
たとえ敵でも、たとえ母親を面汚しと蔑ました仇でも。
仲間を何人も救ってきたその医者の手を、血族を殺して血に染めることを。
『アイツは何か隠してる。数年の縁の俺たちにも言わねェ何かを』
“私のことをアンタに話しても何にもならない”
理由はないが高杉はそんな気がした。
『そーだろうな…』
以前、銀時とこんなことを話した憶えがある。
腹ン中に何か抱えてるんじゃねーかと、2人で考えた。
(あの時は、まさか雅の縁者が幕府側についてる、なんて考えもしなかった。だが…)
それを言うっつーことは、雅は、もしかしたら…
(だが幕府の肩持っているからといって、何も殺すまでも…しかも自分の…)
「なんて、まだ戦に勝ってもいないのに、そんな話するなんて気が早いね」
晋助は前、私に言った。
『この先のことをずっと考えたとしても、今が変わんなきゃ未来も変えられねえ。そのために、今は“今”のために最善になるよう全力を尽くす。それだけで十分じゃねえか?』
なら、“今”は松陽を助けることだけを考えればいい。
皆を治療して戦力を落とさないようにするのが私の役目でもある。
なのに未来や今どころか、過去に縛られるなんて、本末転倒にも程がある。
あくまで、私の母のお家が幕府側で、
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この戦においても中枢を握ってる存在だと、再度心に留めておきたかっただけだ。