第4章 疲れたときほど甘いものはウマい
この戦に出ると決めた時から、いやそれよりも前から私の意志は変わらない
あの人は私たちにとって、“陽”(ひ)の光のような存在でもある
あの時、路頭で彷徨ってた所を拾われた
あの人は、松下村塾を照らす大きな“光”だ
雅は書物を懐にしまった。
「私は…ずっと先生に助けてられ、いつも貰ってばかりだった…」
「……」
「だから今度は“私が助ける番だ”って…私じゃ力不足かもしれないけどね」
「フン…てめーらしいな」
先生を救いたい気持ちは同じ
それだけは、はっきりしている
高杉は2本目のヤクルコを開けて、ゴクリと飲んだ。
「…今頃どうしてるんだろう」
ピタッ
雅の言葉に、高杉はヤクルコを飲む手を止めた。
彼女はそのまま不安そうな表情で独り言のように呟く。
「今でも思う。あの時止められたらって…」
どんどん遠ざかる恩師の背中
燃え上がる松下村塾
銀は剣をとって最後まで諦めなかったが、
私は…何も出来なかった…
高杉はヤクルコの飲みかけを静かに置いた。
「恐らく監禁されてんだろうな…幕府の檻ん中に」
「あの人は何もやってない。捕まる理由なんて…むしろ……」
雅はハッとして、口をつぐんだ。
「どうした?」
「…何でもない」
雅も2本目をグイッと飲んだ。
「そう思い悩むな。あの人はそんな簡単にやられねェ。てめーも知ってるだろ?」
高杉は雅は宥めるように優しい言葉をかけた。
「…うん」
確かに、あれだけ強い人が簡単に…
迷ったあげく、高杉は今までも疑問に思ったあることを雅に聞いた。
「お前 松下村塾に入る前どこにいたんだ?」
「!」
“先生に助けらればかり”
その言葉で、昔ヅラに教えてもらったことを思い出した
“アイツも銀時と同じ、独りでさまよっていた所を松陽先生に拾われたらしい”
俺は松下村塾で、コイツに介抱されてた時に初めて会った
何年かの腐れ縁にも関わらず、ヅラや銀時のは多少知ってるが、
・・・・
コイツの生い立ちとか全く聞いたことがねェ
「何で?」
「先生に助けられた形で、入門したと聞いたが」
雅は雲から現れた満月を見た。
「銀時と同じだ。
私は、1人迷っていた所を松陽先生に助けられた形であの塾に入った」