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君想ふ夜桜《銀魂》

第4章 疲れたときほど甘いものはウマい



現在

その後の雅の働きに誰もが舌を巻いた
剣の腕も申し分ない上に、何より“医術の腕”

傷の縫合、臓器の手術でさえも淡々とこなせる
誰もが見たことのない凄腕

一から医薬も作れる
鎮痛剤に手術用の麻酔薬

雅よりも優れた医者がいるとしよう

“この世で一番の名医とうたわれる者がいるとすれば、それは神ではないか?”

彼女はそれほど、この戦で有効な存在である

(初めてコイツのを見たときは、目も疑ったぜ)

いつも俺たちが戦で見る血とは全く別物
見飽きてる俺たちでも、その光景に血の気を引いた

コイツの白い(手術用)手袋は赤に染まり、皮膚を裂く生々しい音、血生臭いにおい、張り詰める空気が感覚を鋭利にした

コイツは今まで、俺たちと違う別の戦いをしてきた

だが、共に戦ってきたことは何の変わりもない

コイツは一体…


「アンタは…結局どっちなの?」

「?」
     ・・・・・
「あれは、私のために言ったの?」

あの時雅は戦のことで、高杉に反対してほしくなかった。

その思いが高杉の意志と反する結果になったのではないかとそう思ってた。

「俺がそう思っただけだ」

別に気なんか遣っちゃねーよ


さっきよりも強い風が吹いてきて、雅は体を丸めた。

いくら初夏でも夜はまだ肌寒い。

外に出るならもう一枚着ておけば…

パサッ

「!」

いきなり何かを掛けられ、自分の肩を見たらそれは高杉が着ていた羽織物だった。

「貸してやる」

「……」

高杉の厚意にありがとうと軽く頷いた。


「それと前から思ってたが、男しかいねェこの場にてめー1人だけってのは苦じゃねーのか?」

朝から晩まで、雅には色々と苦労がある。

女1人が戦場で、ましてやこの拠点でも目立つ。
コイツに気がある野郎共もいる。

そんなのは序の口。
日常でよくある着替え、入浴、もしくは就寝の時でさえ…

しかし雅はそんなことに全くうろたえない。

「別に苦じゃない。ただ…」

懐から何かを取り出した。

「!! それァ…」

松陽先生の遺した書物だった!


「私の覚悟は、とうの昔に決まってる」

彼女は書物を大事そうに抱えた。


「私はただ先生を救いたいだけだよ。
       もう、後悔したくないから」

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