第13章 青い髪、赤い血
雅は微かに笑みを浮かべ、低い声を出した。
「あれェ?図星だった?」
ゾッ
雅は薄笑いを浮かべ、そのらしくもなく見慣れない顔に高杉は少しゾクッとした。
「確かに…恨んでないと言ったら嘘だ。簡単に言えば、恨んでるようで恨んでない、少し恨んでいる」
「てめえの親父はラー油かよ?」
「いや甘党だった。銀ほどじゃなかったが」
「好みの話しじゃねェよ」
雅はハァとため息をもらした。
「正直、あまり父親のことは話したくない。でも、さっき言ったように、うちの家庭はジグゾーパズルみたいに複雑だったんだ。お母様は父さんのことが…」
・・・
「お母様?」
ハッ
「すまんタイム」
やってしまった。
雅は片手で頭を抱えて、顔を伏せた。
(もしかして…恥ずかしがってるのか?)
雅が言い間違えで頭を抱えるなんて。
「…母親が昔お嬢様だったから、その…嫌がらせで呼んでただけなんだ。その癖が中々抜けないだけだ」
「そ、そうか…」
雅はため息をついた。今日はやけに多い。
(その分、色々と悩んでんだな…今までも)
雅は色々と複雑な思いをしていたのか。
母親が父親を好きだったから憎めない。
両親共に罪人だから、氏も素性も隠してきた。
だから今まで周りを遠ざけてきた。
家の事情なんか、簡単に他人に相談出来るわけねーな。
「……もし父親が生きていたら、会いたいって思うか?」
「…そうだな。会って、「一発ぶん殴らせろ」とは言いたいな」
「!」
雅は左手で握り拳を作っていた。本気だ。
「…すまねェ。てめーにそんな事情があるとは知らず、変な冗談言って。あれは嘘だ…」
『だったら、俺に嫁ぐか?』
自分の家の事情とは関係なしで、雅に本当は嫁ぎたいという意志があるのかどうかは分からない。
だが少なくとも、こんな戦の中で、そんな信憑性の無いことを口走るべきじゃなかった。
お山の大将とあろう者が、全くとんだ失態だ。
「……全てが終わって、もし、私の父親を殴ってくれたら、さっきの話考えるけど」