第13章 青い髪、赤い血
「そうだな。少なくとも、“てめえ”(自分)が誰かの言いなりになるのは嫌だった。親のコネだので威張ってるだけのボン共と同類になるのもな。俺は息苦しかったから、息を吸うためにあそこから這い出たんだ」
「……そうか」
高杉は銀時に何度も勝負を持ちかけて、何度も息を切らしていた。
息苦しさから解放されるために、何度も息を切らせて戦っていたんだな。
きっと高杉は銀時と同じような、根からの悪ガキの素養があったから、他のボンボンと気が合わなかったのだろう。
(……お母様も、生きるのに息苦しかったから、自ら父さんと生きる道を選んだのかな…)
「お前、どうしてそんな重要なことを、俺に教えてくれたんだ?他の誰にも言ってねーんだろ?」
雅の出生には、母親の出生と彼女の罪が深く関係している。
「自分は犯罪者の娘です」なんて、そんなこと簡単に言えるものじゃない。
教えてくれたのは嬉しかったが、理由が気になった。
初期では、自分のことは話さないなんて言ってたのに、何故今?
「俺も名家の生まれだからか?」
「……アンタには知る権利があると思ったからだ。そして何より」
「何より?」
「もうページ数が355Pもいってるのに、主人公の過去篇が全くないのはちょっと。読者もじれったく思ってそうだから頃合いかなと」
「そんな理由かよ?!それでいいのか?主人公の壮大な過去を披露するのがそんなんでいいのか?」
あらゆるジャンプ作品において、作品の表紙を飾る主人公の過去は醍醐味だ。
そんなおいしいところをようやく発表した理由は、まさかの読者サービスだった。
高杉が思っていたのは、「昔より仲間を信頼したから」とかもっと少年漫画っぽいことだったのに。
「それに聞いてきたのはアンタだ。私が嫁ぐ気がないのは、母親の二の舞を演じたくないからでもある」
「!」
確かに高杉は雅に、何故嫁がないかと聞いて、雅は純粋にその問いに答えた。
嫁がないのは、親の事情も絡んでいるからだと。
「“嫁ぐ”っていうのは、己の内の全てを相手に打ち明けることだ。私はこの先も自分の氏を隠し続け、誰にも素性を明かさないだろう」