第13章 青い髪、赤い血
母親が好きか?そりゃ…
「愚問だな。そして無論だ」
「なら十分だろ。その想いが本当のものなら。誰だって親しい仲の奴を時に憎むことだってあらァ。親だろうが友だろうが。良く知ってるからこそ、憎むことだってあるだろ」
確かに。高杉と銀時がその代名詞だから、説得力があった。
悪友は、お互い憎み合い時には分かり合うものだ。
(私はお母様を憎んでいるのか、よく分からない。でも、晋助の言う通り、好きなことには変わりない…)
「それに…俺もお前の母親と似たようなもんだ……自分の家をすっぽかしてでも、好き勝手やりてェって気持ちは何となく分かるぜ」
「アンタ……」
そういえば、高杉は武家の長男でもあった。
桂が昔、松下村塾で雅に高杉のことを教えてくれたことがあった。
雅は他人の生まれには興味はないと断った。
自分が正体を隠しているから、他人のことを知る権利はないと。
『アイツはお家の生まれだったんだ』
ピタッ
それを聞いた途端、高杉に少しだけ興味が湧いた。
高杉は松下村塾に入る前、元は名門講武館で精進する門下生だったが、周りの空気に馴染めず、他の生徒といつも衝突を繰り返していた。
そんなもめ事を繰り返す高杉を、父親は『一族の面汚し』だと言っていた。
元から家族との仲はそんなに良くなかったが、吉田松陽という怪しい浪人とその者が開く松下村塾に近付いたことをきっかけに、親子間の亀裂が入った。
そして高杉もまた、お家から勘当された身になった。
(俺の場合、憎しみも愛情も特に何も無かった。あったのはつまんねェ肩書きだけだった)
お家だのお国だののために死ぬ“侍”。そんなつまらねェモンになるのはまっぴらごめんだった。
俺の父親も俺をただ世間で言う立派な侍にしたかっただけで、俺の意志なんか知ったこっちゃなかった。
俺は誰かに用意されたモンになるつもりもなかった。
だから俺は自ら道を選んだ。松陽先生の元で侍になることを決めた。
「自分のやりてェことがようやく見つかって、それに無我夢中だったんだろうな。てめェの母親は」
「…そんなに息苦しいものだったの?お家に縛られることが」