第13章 青い髪、赤い血
「何…だと……」
雅の母親が……咎人?
だから、雅は…自分の正体を……隠していた……?
だから、ずっと独りでいた…?
だからあの夜、泣いていたのか……?
あらゆる疑問が頭の中を駆け巡った。
(バカな…そんな…ことが……)
「そんなこと言われてそんな顔していても、アンタは私を気に入ってると今でも言える?」
雅は口元は笑っていても、とても悲しそうな目をしていた。
そんな辛そうな目を向けられて、こっちも苦しくなってきた。
なんて声をかければいいか、分からなかった。
それでも、動揺で口を震わせながらも何とか声を出した。
「何が…あったんだ……?」
雅は棚から煙管を取り出した。
窓の外に向けて一服して、背中を向けたままでいた。
「話す前に約束しろ。このことは他言無用だということを」
「あ、ああ」
「それともう一つ。私が「いいよ」と言うまで、何も問いかけないで」
「!」
つまり、これから高杉が話すことは許さないということだ。
これからは自分だけが事実を口にする。
「…分かった」
雅は高杉が見えないところでフッと笑った。
「私が母親の罪状を知ったのは、母が死んだ後だ。家の蔵に妙な資料が山積みにされているのを見つけて、調べたんだ」
その内容は、とある地域のとあるお尋ね者に関する記事だった。
しかし自分が暮らしている平和で辺鄙な場所からかなり離れた地域の記事だったから、あまりにも不可解だった。
((何でこんな遠い場所の地方記事が…))
「そこに母の名前と罪状が書いてあった。その罪状は…」
高杉は息を呑んだ。
「母は、自分の一族を裏切ったんだ。それも、たった1人の男のために」
そこからは、実際に母から聞いた話をそのまま高杉に聞かせた。
“私の母親は、名高い名家の生まれだったらしい”
“跡継ぎを産む役割を担う母には、生きるのに必要なものを全て用意されていた”
“だからそこには自分の意志は欠片も何もなかった”
“だから母は、自らの意志でそれらを全部捨てて、どこの馬の骨とも知らない男と共に人生を歩む決意をした”
“それが後に、私の父となる人だった”