第13章 青い髪、赤い血
「え?」
高杉は思わず後ろに下がって、戸襖に背中をドンとくっつけた。
(な、何言ってんだ……俺?)
顔を片手で覆い隠して俯いた。
「すまん。タイム…」
寄りによって本人の前でとんでもねェこと言っちまった…顔をまともに見れやしねェ。
「どうした?気分が悪いの?」
ああ。今までの中でも断トツに最悪だ。
「今のは嘘だ。忘れろ」
「正気を無くしたの?それ言ったらアンタ…」
(やべ、雅どん引きしてんじゃねーか)
高杉は雅の顔は見ずともそれが分かった。
「戦でその手のセリフは、大半が死亡フラグじゃないか。アンタ死にたいの?」
「へ?」
またしても予想だにしない返事が返ってきて、顔を上げた。
「そういうセリフ吐く奴は死ぬのが、大体のお決まりじゃないか。私はそれが嫌で今まで断ってきたんだ」
特に、青鬼などの脱出ゲームで「ここから抜け出せたら結婚しよう」とか言う奴は。
「死にたくはねーが…そんなこと気にしてたのかよ?」
「ああ。私は主人公補正で死なないから。私はアンタを殺したくないよ」
「勝手に殺すな」
ナァ~ゴ
『!』
どこかから妙な鳴き声が聞こえてきた。
キョロキョロ部屋の周りを見渡す高杉に対して、雅は驚きを見せず部屋の窓を開けた。
上半身を外へ屈めて、外にある何かを拾った。
「お前…!」
雅が持ってたのは、1匹の黒猫だった。
両腕で包み込んで優しく撫でた。
「知り合いか?」
「古い友人だ。いや、友猫か。ずっと前、傷を負っていたのを手術で治した。それからこの調子だ」
ミャ~ニャ~
雅の着物に毛が付くくらい体をスリスリ押し付けて愛情表現している。
高杉は恐る恐る触ろうとしたら、猫は警戒してシャーと鳴いた。
「なぁ、この猫どっちなんだ?」
「性別?オス」
ピンと来た。
この猫、まるで自分の物を取られることを怒っているようだ。
“俺の雅に近付くなああーッ!”
「アンタは猫アレルギーじゃないはずだから大丈夫だよね」
「ああ。てめーに検査してもらったから間違いねェが」
もしかしてこの猫、“さっきの会話”を盗み聞きしてて、嫉妬してんのか?