第13章 青い髪、赤い血
昨日やられた腕の傷はすっかり良くなっており、抜糸ももう済んだ。
その礼を兼ねて何かやりたいと思った。
「じゃWILKINS○Nでいいや。冷蔵庫にある」
「0kcalじゃねーか。炭酸で腹満たしてどうする?まだんまい棒の方がマシだぜ」
「…じゃあ軽いもんなら何でもいい」
高杉は一旦部屋を出た。
10分後。
りんごを持ってまた現れた。
「ほらよ」
「ありがとう」
雅は皿を受け取った。
「にしても意外だったな。慕情に興味ねェって言ってたのに、初恋とは。何で教えてくれたんだ?」
「アンタが質問したからだ」
「だが言いたくなかったら言わなくていいんだぜ」
「……黙秘はYESと相場は決まってるし、嘘はなるべく言いたくない。最も、アンタが今まで私に嘘をついたことがあるのなら、私にもその権利のストックはある」
「心当たりねェなァ。嘘つくのにもフェア求めるのかよお前。律儀さが独特だぜ」
シャリ シャリ
雅はリンゴ食べた。
「……」
「……」
話すネタが無くなって、お互い無口になった。
カニじゃないが、リンゴを食べて無口になった。
シーンとなると大体、無音でも大丈夫派と大丈夫じゃない派で分かれる。
雅は大丈夫派だが、高杉は時と場合によった。
彼女の目の前だと、何か話をふって少しでも楽しませたいと努力する。
松下村塾でつまんなそうにしてた彼女のこともあって、自然とそうなったのだった。
(何かいい話題でもあるか……)
「アンタ将来いい旦那になんじゃない?」
「そうかい………。?!」
高杉は雅を二度見した。
恋愛願望も結婚願望もない奴が、まさか自分から恋バナをふってくるとは。
「な、何だ急に?」
「何となくだ」
松下村塾で気に食わないと言いながら勝負を挑んできたり、こうしてリンゴを剥いてきたり。
ヅラも「高杉は私に張り合って面倒を見たがる」とも言っていたから。
「……余談だが、辰馬とヅラは私に、嫁の貰い手が心配とか女の幸せとか、色々言ってきた。周りはそんなに私を嫁がせたいのかね」
やれやれと呆れていた。
「だったら、俺に嫁ぐか?」