第13章 青い髪、赤い血
「そこにあるのも、ヅラの差し入れか?」
高杉は戸棚のそばに少女漫画が置いてあることを、ずっと気にしていた。
間違いなく彼女の物ではない。
「うん。アンタも借りたことあるの?」
「いやねェよ。お前が借りるなんて意外だな」
「“好意”を知れって貸してきた」
1冊を手にして、ほんの表紙を見せた。
『私のこの胸のドキドキを治してください』
恋愛モノでこのタイトル。表紙の絵から見て、最初は医者とナースの関係が恋人同士へと展開する物語だ。
「……感想は?」
高杉はマンガには全く興味なかったが、それを読んだ雅の感想には興味あった。
「仕事しろ。以上」
バッサリ言い捨てた。
「登場人物のほとんどが、人の命を救う場である病院を自分の家と勘違いしている愚か者ばかりだった。プライベートならともかく仕事で私情や欲を垂れ流すのは明らかにきちがい」
想像以上な酷評に高杉は苦笑いした。
(ヅラの奴こんなのが趣味だったのか。少し見損なったぜ)
こんなの雅が楽しそうに読むわけねェだろ。
しかも“本業”(医者)にフィクション見せたら、そりゃリアリティーだって物足りなくなるだろ。
「ほ、他にマシなもんはなかったのか?」
雅は別の漫画を手に取った。
『トワイライト・オブ・ラブ』
シャイな転校生の少女と冴えない少年のラブコメものだった。
高校生の男女が幸せそうに手をつないでいる表紙の絵から、純愛モノと予想が付いた。
(やっぱり雅が興味持つとすりゃ、あんな疚しいモンじゃねーよな…)
さっきのは選択ミスだったが、これなら雅にとっても良かったんじゃねーか?
「で何が良かったんだ?」
「絵」
内容には興味がなかったらしい。