第13章 青い髪、赤い血
「……お前…昨日のこと、怒ってるか?」
高杉は目を合わせないで質問した。
雅がどんな顔をしているのか、見るのに少し抵抗があった。
「…怒っていたのはアンタだろ?」
「!」
高杉は目を合わせた。
「アンタは昨日みたいに、私が無防備に襲われる事態を恐れて、私に直接教え込もうとしたんだろう。何の理由もなしに強行する奴じゃないからね。アンタ」
「……すまなかった」
「謝るくらいなら最初からやらない方がいい。それにあいこと言ったのはアンタだ。でも、以後気をつける。何かあったら相談する。あとこれから戦に出るのは週5から週3までに控えようと思う」
!!
高杉は拍子抜けでポカーンとした。
昨日はあんなに張り合ったのに、今日はやけに聞き分けがいい。戦をバイトみたいに言っているが。
また嘘付いているようにも見えない。
「どういう風の吹き回しだ?」
「話せば長くなる。けど、アンタには大きな借りができてしまった。それぐらいしないとフェアにならないっていうのもある」
『これで俺とお前は1勝1敗で、始めもさっきの試合もチャラだ。つまりてめーと、心置きなくやり合えるって訳だ』
雅が高杉に挑まれて勝った後に言われた言葉。
戦いや借りにおいても、互いにフェアである方がいい。
負けた言い訳などにしたくない。
全て、高杉の受け売りだ。
勝負に何の執着もなかった彼女がそう思うようになったのは。
ハッ
「そりゃ結構だ。次から気をつけろよ」
高杉は薄々思った。
(ヅラが上手くコイツをなだめたってことかい…)
コイツが自分から戦に出ることを控える、なんて言うとは思えねェ。
流石は俺たちを率いる将さんだな。
頭は腐っていても、いざって時はやる。
・
「でも晋助。逆を考えたことはなかったの?」
・
「逆?なんのことだ?」
高杉は首を傾げた。
「他の奴らが私を襲うのとは逆で、私が欲を満たすために誰かを襲うことだ」
「!!」
この質問も、予想の斜め上を遥かに超えた。
「お、お前が…?まさか、そんな気でいるってわけじゃ…あるめーよな?」