第13章 青い髪、赤い血
(……今日で最後にすればいい。足もとっくに治ってる。話ならどこでもできる)
意を決してノックをした。
しかし意に反して、返事は帰ってこない。寝ているのだろうか。
「…開けるぜ」
戸襖を開けたら、雅が背中をこちらに向けて寝ていた。
布団を掛けていなく寒そうだ。
(何か掛けるもんは…)
!
数日前、雅に貸した高杉の羽織りが壁にかかってあった。
高杉はそれをまた雅に掛けようとした。
ガシッ!
「!」
高杉は雅に腕を掴まれて、そのまま敷き布団に押し倒された。
「グッ!」
体の上に乗られて身動きを封じられ、喉に小刀の峰の方を突きつけられた。
「お、おい!俺だ!高杉だ!」
「!」
あれ?
雅はハッとして、状況を理解した。
寝てる時、後ろから不意打ちを突かれる気配を感じて、つい護身術を使ってしまった。
要するに、寝ぼけていた。
「お、かえり…」
「ただいま、じゃねェよ」
高杉はノリツッコミをした。
高杉は戦帰りだが、護身術をかけた相手にかける言葉じゃない。
雅は高杉の上から降りた。
「どうやらアンタは、後ろから寝込みを襲うのが得意らしいな」
「ち?!違ェよ!断じてそういうわけじゃねー」
「そういえば鬼兵隊は奇襲が十八番でもあるな」
「何で今それ言うんだ?戦とプライベート一緒にするな!」
もちろん雅は、高杉は仲間にそんな卑怯な手を使う奴じゃないことは分かっていた。
「すまなかった」
「いや、後ろから近付いた俺も悪かっ…」
雅の胸元が少しはだけているのが見えて、目をそらした。
「お、お前、服整えろ」
自分の胸元を指差してジェスチャーして、雅は整えた。
(昨日は触ってきたのに。おかしな奴だ……)
雅は小刀を鞘に収めた。
「……その小刀、どこで手に入れた?」
「……借りパク」
(予想が斜め上をいった…)
せんせーと父親。果たしてどちらだったか?
何にせよ大事なものには変わりない。