第13章 青い髪、赤い血
松陽は自分の羽織りを雅にかけて、血がバレないように隠した。
「小太郎。私は雅を連れて一旦塾に戻ります。銀時と晋助と合流して、少し待っていてください。後で迎えに行きます」
「!。あ、はい」
「銀時たちには、「厠に行った」と嘘を言ってください。私はハンパ者じゃないので言っても大丈夫です」
「あ、はい…」
さっきまで泣いていた先生が、あっさり元の先生に戻り、何だか拍子抜けした。
「あと、今日見たことは内密でお願いします」
「!」
「3人だけの秘密です」
松陽は口元に人差し指を立てた。
雅はさっきから俯いたままで、まるで人形のように動かない。
見たところケガは無さそうだが、本当にさっき何があったのか。
さっきの男たちも無傷だった。じゃあ雅の着物についている大量の血は、誰のものだったんだ?
様々な疑問が浮かんだが、松陽の言う通り彼女を安全な場所へ連れて行くのが最優先だ。
「……分かりました」
「いい子ですね」
松陽は笑って桂に感謝し、雅を連れて松下村塾へ帰った。
桂は2人の背中を寂しそうな目をして見送った。
(雅……)
先生が泣くほどまで、雅を心の底から心配し、本当の親子のように抱擁した。
俺はあれを見て以来、雅の顔を見ると、松陽先生の面影を感じ取ってしまうようになった……
~~
現在
辰馬率いる軍と高杉の鬼兵隊が基地に帰ってきた。
「ふぅ。今日も苦闘じゃったのう高杉。お前がいなかったらやられていたぜよ」
「…そりゃどうも」
高杉は辰馬と特に話もせず、スタスタ向こうへ行ってしまった。
「やれやれ。つれないのう。そーいうとこが似てんじゃき。アイツと…」
高杉が向かった先は、雅の部屋だ。
彼女がちゃんと部屋で休んでいるかを確認するために来た。
ノックをしようと手を出したが、昨日の出来事を思い出し寸止めした。
雅にヒドいことをした。
「……」
嫌われてもいい覚悟であんな事をしたが、いざとなると少し怖くなってきた。
惚れた女に嫌われることを。
そんな自分が情けない。