第13章 青い髪、赤い血
「先生。少し…厠へ…」
「はい。気をつけて」
雅は厠へ行き、残ったのは男だけになった。
「あ、俺も行ってきます」
少し経ってから、桂はかき氷を食べたことで用を足したくなった。
「え?ヅラ。もしかして雅の後を追うのか?何か疚しいことでも考えてんの?」
「疚しいじゃない桂だ。雅が帰ってきてから松下村塾に戻るまで我慢できなさそうだから行くのだ。先生、いいですよね?」
「ええ。待ってます」
桂も厠へ向かった。
(雅が参加してくれてよかった…)
桂は彼女のことを考え始めた。
雅は正直、元々目つきが冷たい感じだから、近寄りがたいかもしれない。
※設定では、彼女の眼は三白眼で少し怖め。
見た目で皆誤解することはあるが、だが奴は本当は根はいい奴なんだ。俺はアイツの母親ではないが、それくらいは分かる。
桂は厠について用を足した。
(ふぅ。雅とはすれ違ってしまったのか…)
厠から出て、辺りを見渡して彼女らしき者がいないか探した。
「ん?」
目よりも耳が先に察知した。
何か妙な声を拾った。
雅ではない。複数の男たちの呻き声、みたいなものだ。
「何だ?」
厠の裏の木が生い茂っているところからだ。
桂はその中を進んでみた。
(こんな暗いところに人がいるなんて、何か妙だ…)
「な、何なんだよ…お前!」
!!
声がはっきりと聞こえてきて、桂は急いで現場へ向かった。
「雅?!」
3人ほどの男たちと雅が向かい合っていた。
暗かったが、被っているお面からすぐ彼女であることが分かった。
「ど、どうしたのだ!こんなところで……」
彼女に近付いて気付いた。
雅の着物が濡れていたのだ。
ポタポタと絶え間なく地面に滴り落ちるほど。
(雨など降っていたか…?)
そこで見たものは、桂にとって忘れられない光景となってしまった。
雅の着物全体にべったり付いていたのは、雨ではなかった。
大量の血だった。
気付いた途端、さびた鉄のような生臭さが嗅覚を刺激した。
彼女の青い髪も、赤い血で濡れていた。
その姿は、まるで“死神”だった。