第13章 青い髪、赤い血
その後の金魚すくいでも、彼女の意外な才が発揮された。
まるで肉を捌くような手捌きで、丁寧にかつ素早く金魚を次々にすくった。
3人は凍り付いたように動けずただ驚いた。
「おおー、すごいですね。雅がそんなに金魚が好きとは知りませんでした」
((いやそこじゃねーだろ))
すくった金魚は屋台にお返し。キャッチアンドリリースした。
その後は皆でベンチに座って、それぞれが買った食べ物を頬張った。
じゃがバタやチョコバナナにりんご飴。
かき氷は、銀時が宇治金時、桂はコーラ、高杉はカルピス、雅はブルーハワイを選んだ。
(選ぶ味もバラバラですか…)
松陽は無難にイチゴ味を選んだ。
目の前を通り過ぎる人たちは、こっちを見て微笑む。
「子供たちが大勢で楽しそうね」と思っている。
「雅は青のブルーハワイか。君の髪色と同じだな」
桂は雅の変わった髪色を指摘した。
銀時の銀髪と同様、雅のような髪色をしてる人は見たことがなかったから。
雅は自分の髪を摘まんでジリジリいじった。
「……変…かな?」
「い、いや。そう言うわけでいったんじゃ…」
「別に変じゃねェよ。澄みきった青空みてェで綺麗じゃねェか」
『!』
全員が一斉に高杉に注目した。
口走った本人は目元を隠して恥ずかしそうに俯いた。
桂でさえも、高杉がお世辞を言うところを見るのは初めてだった。
銀時には憎まれ口を叩く、ザ・皮肉屋なのに。
(高杉が誰かを誉めるなんて…)
しかも女の子に。
「そうですね。雅が青空なら、銀時は雲ですね。“ゆず”とかきっといいバンドになりそうです」
「なんでバンド縛り?それに俺は静か系よBon Joviみてーな力強い系がいいぜ」
「何を言うか、B`sこそ正義だ」
何故か高杉と雅を除いてバンド雑談へと突入。
(だー!何て俺はあんなこと口走ったんだ~!)
女に“綺麗”なんて、まるで脈ありみてーになったじゃねーか!
“…あ、ありがと”
(え…)
高杉は雅の方から、小さな声を聞き取った。
横を見たら、彼女が面を横顔にずらして、ブルーハワイをシャリシャリ食べている。
ここからじゃ、どんな顔をしてるのか、笑っているのか分からなかった。