第13章 青い髪、赤い血
「あ?何でてめェが…」
雅は高杉の背中に覆い被さるように、後ろから腕を掴んだ。
ドキッ!
高杉は体が固まり、心臓の鼓動が早くなっていった。
こんなに後ろから密着されることがなかったから。
「まず脇締めて。大工は釘打ちの時、金槌で狙いが定めやすいように同じことをする。あと狙うのは商品の真ん中じゃなく右上」
「あ、ああ…」
言われたとおりにやってみた。
パァン!
「!」
すると見事に当たった。
「おお。やったではないか高杉」
「雅。次俺にも教えてくんね?」
「…別に構わない」
雅が高杉の後ろから離れ、高杉はようやく気を緩めた。
カアァ…
顔を若干赤らめながら、残りの球で次々に商品を落とした。
(フフフ。たとえライバルでも、教え合い成長していく。この遊びもまた君達の成長の場ですか…)
松陽は彼らの後ろ姿を微笑ましく見守っていた。
雅は高杉だけでなく、銀時や桂にも敵関係なくコツを教えてくれた。
彼女自身の力で、皆と溶け込むことができた。
晋助は私ではなく、同じ年の子から教えてもらうことをあまり好まない。
教えてもらうということは、相手より弱い立場になる、という思い込みがあったからでしょう。
(でも、雅もまた同じ。晋助に教えてもらうばかりでは、目覚めが悪いでしょう…)
彼女は晋助から、“勝つ価値”を教わりました。
敗者は悔しいながらも己の弱さと向き合う機会を得られる。
そして敗者から勝者になったとき、その人は今まで努力が報われることを実感し、喜びを得られます。
雅がここ最近、稽古に熱心になりました。
目を見れば分かります。
たとえ顔に出なくても、勝つことには必ず意味がある。
敗者だろうと勝者だろうと、互いに価値があるものを得られる。
雅は晋助に教わったのは、それくらい大事なものです。
そんなことを考えてたら、射的の試合は終わっていた。
順位は、
1位雅、5発命中。2位銀時、高杉、桂、3発命中。
まさかの3人が同順位だった。
「あらあら。まさか同じとは予想外でしたね」
松陽は雅に500円、他の3人に300円ずつあげることにした。