第13章 青い髪、赤い血
そして5人は祭りが開催されている町へ向かった。
銀時と涙目になってる小太郎は、歩きながら頭の上のこぶをひしひしと痛んだ。
「俺は真面目にやったんだぜ松陽。あんな傑作、俺しかあみ出せねェよマジで。将来ピカソみてーに売れても知らねーよマジで」
「君はもう少し努力のベクトルの方向を変えてはいかがですか?きっと見えてくる景色も違ってきますよ」
とは言ったものの、実は松陽は銀時が描いた絵を密かに気に入ってたので、綿飴くらいは買ってあげようと思っていた。
(痛っ…)
高杉はこぶは引いたがまだ痛かった。
そしてお利口さんの雅は何もされてなく、無表情でスタスタ歩いていた。
(相変わらず無口か…)
これなら、そこら中ミンミン鳴ってる蝉の方がよっぽど口達者だ。
もう前みてーに独りじゃねェんだから、一言くれー喋ればいいじゃねーか。
と、高杉が思っていたところ、とんでもないきっかけがやってきた。
ピタッ
「え…!」
高杉の背中に蝉がくっついてきたのだ。
ミ~ンミンミンミンミン~!!
『!』
止まった途端、高杉の背中から目覚ましのアラームくらいうっとうしい鳴き声が響いた。
「うわっ…!な、何だ…!」
高杉は腕を背中に伸ばして何とか取ろうとすると、手が届かない。
その光景を桂は笑って、銀時はその倍くらい爆笑した。
「ダッハハハハ!身長と腕の長さって比例してるから、全く届いてねーぜ。孫の手でも使わねーと」
「うるせー!しかも蝉の声で全く聞き取れねーよ!」
「しょうがねえから取ってやろか?」
「誰がてめーの手なんか!年中砂糖ベトベトの手なんて死んでも求めるか!」
ピキッ!
しかし、高杉は腕を無理に背中に伸ばした結果、腕がつってしまった。
(つ、つったー…)
弓で糸を張ったような痛覚が腕を走った。
「お、おい大丈夫か高杉?」
桂は高杉の異変に気付いた。
高杉が松陽先生に取ってもらおうと思ったその時、雅が背中の蝉を掴み野生へ放した。
『!』
そしてそのまま高杉のつった腕に触れて、背中からゆっくり前に戻した。
「お、おい…!」
さっきまで無口だった無表情が、いきなり動き始めて驚いた。
そして高杉の腕をじっくり見てから、手を離した。
「……問題ない」
これが今日雅との初めての会話だった。