第13章 青い髪、赤い血
異例の寺子屋の道場破りを経て、自分の侍を見つけることができた。
松下村塾に入ってから、高杉は明らかに前よりも楽しそうだ。
同じ講武館にいた桂だからこそ、その変化が分かった。
(高杉のことはあまり好きじゃないが、元気にやってるなら良しだ)
そして高杉は、雅という少女にも出会った。
彼女は剣の腕は高杉と互角になるほど強いのに、いつも独りでいて、とてもつまらなさそうにしていた。
・・・
(だから高杉は、雅をほっとけなかったなんだな…)
彼女が嫌いだったからではない。自分もかつて、つまらなかったから、それが苛立ったのだろう。
高杉が祭りに行くのにテンションが上がったのは、きっと、雅とも一緒にいられるからだ。
「……晋助か」
雅は高杉の名前を言った。
「お前はこれからどうするのだ?」
「……道場で素振りする。独りで鍛錬したいから、その…」
「ああ。じゃあ俺は書物を読もうと思う。あとで合流しよう」
雅はこの塾で唯一の左利き。
右利きの皆と少しフォームなどが違ってくるので、独りで稽古して自分なりに研究したりもする。
そして完璧超人の松陽先生にアドバイスもたまに貰う。
桂は書庫へ、雅は道場へ向かった。
(雅。以前より自主練が増えたのかもな…)
あの対決以来変わったことは、高杉がライバルが増えただけじゃない。
雅も、以前より稽古に熱心になった。
ポーカーフェイスで何を考えているのかは読めないが、以前より良くなっているのは確かだった。
現にこうして、夏祭りの誘いを断らなかった。
(さて、俺は書庫で”猫ちゃん特集”でも見よう!)
ちなみに、雅が稽古に行ったのは、ただの鍛錬ではなかった。
こう思ったから。
(屋台で美味しいものを美味しく食べたいから、お腹空かせるために運動しよう)
その後、廊下には4人が書いた習字の作品が貼られた。
『飛翔』 雅
『飛翔』 高杉晋助
『飛翔じゃない桂だ』 桂小太郎
『ジャンプのイメージキャラクター
ジェイミーのイラスト』 坂田銀時
「小太郎くんと銀時くん。あとで職員室来てください」
祭りに行く前に、再び桂と銀時は松陽にゲンコツを食らった。