第13章 青い髪、赤い血
「やれやれ」
(目を離した隙にまた喧嘩ですか…)
松陽は2人がちゃんと集中しているのを再度確認してから、向こうにいる雅と桂のところへ行き、優しく微笑みかけた。
「手伝ってくれてありがとうございます。君たちはすいませんが夕方になるまで、待っていてください。読書でも散歩でも蝉取りでも、何でも構いませんよ」
「では、他にお手伝いすることはありませんか?」
松下村塾では真面目枠に入ってる桂が松陽に聞いた。
「大丈夫ですよ、小太郎。ああ、後で君たちが書いた習字を廊下に張って提出してくださいね」
松陽はその場を去り、桂と雅だけが残った。
「祭りは嫌いなのか?雅」
桂は、雅が独りでどこか行ってしまう前に、ちょっとした話をすることにした。
せっかくこうして一緒にいるのだから。
男と女では話し方や絡み方は違ってはくるが、銀時や高杉ばかりと絡んでは、雅が可哀相だ。
ちなみに、何故そんなことを聞いたのかというと、皆がさっき祭りに行くことを喜んでいた中、雅は全く笑わなかったから。
「…いや…嫌いではない…ただ……」
「ただ?」
「人ごみが…苦手なだけ…」
雅は庭の葉桜の木を眺めた。
ミ~ンミンミンミンミンミ~
幹には蝉が盛大に鳴いていた。
「だが、皆でいた方が楽しいからな。お前も来てくれて、俺は嬉しいぞ」
「…うん」
桂も葉桜を一緒に眺めて、ふと今までのことを振り返った。
「そういえば、高杉と試合をするようになっただろう?結果はどうなんだ?」
「…11勝8敗。私が勝ってる……」
「そんなにか?!すごいな」
正直たまげた。高杉が唯一負ける相手は、銀時か松陽先生だったから。
こんなところにも、神童がいたとは。
でも…
桂は笑みを浮かべた。
「きっと高杉は、お前というライバルができて嬉しいと思っているぞ。普段はあれで素直じゃないが」
高杉は、講武館では誰よりも強かった。
だが強いが故に、やりがいを感じなくて、いつもつまらなそうにしていた。
銀時に会うまでは。
『アイツらより強い侍になりてェ』