第13章 青い髪、赤い血
“生物濃縮”。
生物が体内に取り込んだ物質が、食物連鎖の課程で蓄積され濃度が増してしまう現象だ。
たとえば、プランクトンなどの小さな生物が少量の劇物を摂取する。
そしてそのプランクトンが魚の餌となり、その魚はまた別の魚の餌となる。
この繰り返しによって、魚の体内の劇物の濃度が高まり、最終的に魚を食べる人間が一番大きなダメージを負うというサイクルだ。
隊士達はそんな雅の理科講座を熱心に聞いた。
「なるほど。ではしばらくは魚料理は食べられないか」
「食肉は高価だからな。あとはさつまいもや人参都下の根菜類しかうちにはないぞ」
「季節はずれの焼き芋でもすっか」
隊士達は取りあえず食糧庫を見に行き、雅と桂が取り残された。
(“川に毒を流し入れる”。お母様から聞いた昔話を思い出すな)
おやすみ前に子供に聞かせるような話じゃなく、恐怖で眠れなくなるホラー回だったから、鮮明に覚えている。
“イワナの怪”(※Googleでも調べられます)
昔、4人のきこり達が楽に儲けるために、川に毒を流して川魚を仮死状態にし大量に穫る計画をしていた。
しかし1人の僧侶が現れて、「殺生はいかん。川には小魚もいる。惨いことはしないでくれ」と木こり達に頼みこんだ。
木こり達は承諾して僧侶に団子を振る舞い、僧侶はお礼を言って姿を消した。
しかし、木こり達は僧侶との約束をハナから護る気など無く、後日川に毒を流し入れてイワナを大量に穫った。
その中でひときわ大きいイワナを穫ることができ、木こり達は大喜びした。
早速、腸を取ろうとイワナの腹をかっさばいた。
しかし、そこからぽろぽろ出てきたのは、昨日僧侶に振る舞った団子だった。
“大きなイワナの正体は僧侶だった”。
それを知った途端、1人の木こりが金縛りにあったように動けなくなり、他の木こりは逃げていったとさ……
『何でそんな怖い話するの?!眠れなくなったじゃん!』
『ごめんね。水質汚染がどれほどいけないことか教えておこっかなって』
『寝る前じゃなくてもいいじゃん!金縛りにあいそうで怖いよー!』
あの時は母親を相当恨み、数日くらい魚も満足に食べれなかった。
腸から団子が出てくるんじゃないかと、怖くて怖くて。