第13章 青い髪、赤い血
それから桂は動ける者を呼び出して、雅の指示通りに動いた。
まず雅は、貯水タンクの中の毒を中和させるための溶液を流し入れた。
そしてそれを川からかなり離れている山の麓へ運ばせた。
土の中であれば微生物が水を分解してくれる。
中和した水なら生態系に及ぼすことはない。自然の力に甘えることにしよう。
(だけど、人間が勝手に作った人工物に、自然ははた迷惑だと思ってるかもな)
もしシシ神様みたいな山の主が実在するのであれば、謝礼のお供え物ができたら…
だが、気にくわない奴だったら、命を奪われるかもしれない。
水を流すよう指示したのは私だから、水に流してくれるどころか、殺されるかもな。
(なんて、自分で何を考えてるのやら…)
命を与えもし奪いもするのは、シシ神だけに限ったことじゃない。死神と呼ばれている私もだ。
ただ、シシ神様は首伸ばして身長も伸びるから少し羨ましい…
となりの桂は急に笑い出して、私は不思議に思い首を傾げた。
「何?」
「いや、すまん。やはりお前は変わったと思ったんだ。最近はちゃんと人の言うことを聞くというか、俺のマンガも素直に読んでくれるからな」
あの少女マンガ、ヅラの私物だったのか。女の子らしさは髪型だけじゃなかったのか。
「…そだねー」
適当に返した。
「何より高杉の言うことも聞いているからな」
「……」
私はこの返事はできず、昨晩のアイツのことを思い返した。
部屋で安静にしていろ、の一点張りだった。
「私は平気」という言葉を出させまいと、強引に口を塞いできた。
別にそんなことされても、本当にどうでもよかった。ただ、
(あの後あんな顔されたから、聞かざるを得なかった…)
本当に悲しそうな顔してた。松下村塾にいた時から、強がりで意地っ張りなアイツが。
軍を率いるリーダーは、常にクールで決して弱みを見せない。
特に銀時みたいに犬猿の仲がいる奴は、ライバル心が強くて弱音も吐かない。
今まで周りで多くの仲間が死んでいったが、それでもアイツは挫けずに前を見る。
(なのに……)
何でそんなことで悲しくなるの?
アンタはそんな弱くないはずだ。