第13章 青い髪、赤い血
成り行きはどうあれ、雅がようやく納得してくれて、ホッとする桂であった。
「あとほかにも聞きたいことがある。昨日の敵はなんだったんだ?」
高杉の肩にボロ雑巾のように寄りかかっていた雅。
桂は重傷で寝込んでいて見てはなかったが、隊士達から話は聞いていた。
「お前がそこまでやられていたのだから、相当だったんだろう」
「敵は“奈落”。幕府の影で暗躍している輩だ。何故か山の中にいて……」
あれ?
雅は妙な違和感を覚えた。
(本当に、何で山の中にいたんだ?)
あの山は、素人からしたらただの辺鄙な場所。
ピクニックしようにも、草木は生い茂っていて眺めなんてないし、瓦礫も多いから危険な場所だ。
(昨日私は落ちそうになった…)
医者の私にとっては薬草の宝庫だが、今の医療であの山の植物を扱えるのは、私含めてたった
・・
2人だけ。
(あの山にあったのは、薬用植物、瓦礫、川……)
川?
「ヅラ。私からも聞きたいことがある。うちの水道って、山から流れる川で水を汲んでるの?」
「ん?ああ、食事や洗濯も、川の水を使っているが…それが一体…」
雅は布団からガバッと出て、机の中から何かを取り出して部屋を出てしまった。
「お、おい!」
桂はまだ傷が痛みながらも、走り去る彼女を追った。
自分から聞いてきたのに、なんでこんな。
(奴はそんな無礼はしない。一体何が…!)
追いついた場所は、台所だった。
雅はそこの貯水タンクの蛇口をひねり、コップに水一杯をくんだ。
「雅?」
そして、机から取り出しておいた検査キットを手に取った。
(妊娠検査薬?)
そんなワードを思い起こしてしまった桂は、とても後ろめたい気持ちになった。
「何そんな渋柿みたいに渋いツラしてるの?」
「い!いや…それより何があったんだ!?」
「今それを確認する」
雅は水を検査キットに数滴垂らし、桂は隣に来て一緒に見た。
すると、キットは無色から“赤”へと変化し、雅はくるりと桂の方に体を向けた。
「ここに20人くらい人手を呼んで、バケツリレー式でこのタンクの水を全部捨てるように言って。ただし、
毒が入ってるから念入りに」