第13章 青い髪、赤い血
桂が言ったことを要約すると、支え合う=大事ということだ。
この場において、ツッコメる人は私1人だけ。
それを思うとしんどくなってきた。
「あー、分かった。アンタの言うことは。休むときは休むよ」
「うむ。それで今は何がほしい?」
桂は逆に何か物欲しそうな目でじーっとこっちを見ていた。
「え、いや、今は頼み事ないけど…」
「よし。風邪気味のお前にうってつけのやつがあるぞ」
ニッコニコして着物の袖の中から物を出した。
それは、9本のんまい棒と8冊の少女マンガだった。
(いや何か違くね?普通、風邪薬やおかゆなのに、何でお菓子とマンガ?小学生か?)
声に出すのもしんどくなってきたので、別の言葉を出した。
「よ、よくそんな入ってたな…」
「腕が袖ごと千切れそうだっぞ。昨日の殿戦は応えたぞ」
(もっと別の運び方があったんじゃないか?しかも何で9本と8冊?)
桂は持ってきた物を指さした。
「お前が十分休養(きゅうよう)が取れるようにと、9と8(きゅうよう)にしたんだ」
(うまくも何ともないよ)
しかもんまい棒は、コーンポタージュやサラミなど無駄なくらい豊富な品数。
あとなぜ故に少女マンガなのか。ラブコメものや、しかも医者とナースの禁断の恋なんてものもある。
「貴様はおなごだが、松下村塾にいたときからそれらしい一般常識はなさそうというか興味がなかっただろう」
確かに、雅は松下村塾にいた頃は、皆には隠していたが医術のことばかりで他はてんで興味がなかった。
高杉の決闘も向こうからの申し込みがない限りやらない。松陽や他の人に物を頼まれれば二つ返事をする。
自分から何かに興味を持つことがあまりなかった。
最近では銀時の影響で、ジャンプを読み始めたが、それではまだ足りないと桂は判断した。
雅は“好意”というものに無知で耐性がないから、それを少女マンガを通して教える必要がある。
「こーいうのを通して、お前には“好意”というものを知ってほしい。まずは無知の知を自覚しなければ始まらん」
「誰が始めるって言った?」
少女マンガなんて、作者と読者の願望や妄想の塊みたいなものだろ。
そんなことに費やすくらいなら、薬の調合に費やすわ。
だが桂は考えなしで、薦めているわけではなかった。