第13章 青い髪、赤い血
「つまり、患者を護れなかった自分が許せないと?」
「そうだ。あの時の後悔は今でも忘れない。まだ子供だった私のことも」
私は自分の弱さを憎んでいた。
あの時の私は、ただケガしている人を救いたいとしか思っていなかった。
誰かが傷つくのは見たくない。誰も傷つけたくないと、子供じみた平和的な絵空事ばかりを考えていた。
誰も傷つけない優しい人間になりたい、なんてことも考えていた。
でも、ろくに剣も握らなかったのが仇となって、戦うことができずあの人を死なせてしまった。
松陽がいなければ、後悔をただの過去として終わらせていただろう。
『辛い思いをしたからこそ、人は優しくなれる』
松陽のあの言葉がなければ、私は気付けなかった。
傷つけないことだけが、優しさのあり方ではないことを。
メスではなく刀を使って人を助けたいと、思うことはなかった。
たとえ敵や幕府に“死神”と揶揄されようと、それで仲間を救うだけでなく護れるのなら本望だ。
救った者たちを護るために。
あの時みたいな後悔は繰り返さないために。
(でも夜になると時々、そんな過去を思い出して、涙をこぼしてしまう…)
ヅラには言えないことだが。
晋助には見られてしまった。しかも2度も。
(皆には冷徹と言われている“死神”が、本当は泣き虫なんて知られたら、それこそキャラ崩壊だ……)
桂は雅の肩に手を置いた。
「あー、あー、まあ、何というか…」
話し始める前に、何やらマイクのテストみたいなことを言った。
(私はマイクか?)
「つまりだ。俺はお前のやり方が間違ってるとは言わん。その孤高の性格も否定もせん。ただお前にはもっと、仲間というのを知るべきだ。
皆はそこまでして、お前に救ってほしいとは思ってないからな」
この軍の将として、そして1人の友らしく、仲間に頼れと雅に告げた。
「お前が色々大変な思いをしてきたのはよく分かった。だから俺はお前のその気持ちを知った上で、お前には軍医として俺たちを支えてほしい。そして、俺たちもお前を支えたい、ということだ」
「は、はあ…」
「それによく言うではないか。長い棒と短い棒は、支え合ったら人になる。支えるから人であって、支えられるから人なんだ」
「いや、いつのCM?」