第13章 青い髪、赤い血
大雑把な銀時と並ぶと、彼女の行儀の良さはとても際立っていた。
それはきっと、親の教育が良かったからだと、何となく分かっていた。
辰馬と同じように、桂も気付いていた。
「普段のお前を見て、少し気になっただけだ」
「……」
私の母親…そうだな……
「少し変わり者だったけど、穏やかな人だったよ」
雅は微笑んでいた。
それを見た桂は口を開けたままでいた。
彼女の笑顔は、どうぶつの森でイトウを釣るくらいレアなものだ。
高杉は頻繁に彼女に会っていたが、桂はあまり自ら彼女の元に寄らなかったから、彼女の笑顔を不思議に思った。
(私よりもツヤがある青髪で、きれいな人だった…)
「あと、三味線が得意だった。指先が器用だった。私が施術が得意なのは、母親譲りだからだと思う」
母の三味線がしまっている襖にチラリと目線を配った。
(そういえば、晋助との約束が…)
「……どうして…亡くなられたんだ?」
「……」
懐かしむ笑顔から悲しそうな笑顔に変わった。
「……病が悪化したんだ。母の亡骸を目の前にしたときは、すごく悔しかった………」
雅は悔しそうにぐっと左拳を握った。
(雅…)
冷酷な死神と呼ばれる者でも、親からの愛情を愛おしく想い、哀しみ愁うただの人間だ。
(これ以上は詮索はしない。だが雅が、女では異例の、医術の道を極める決心をしたのは…)
母親を救えなかったその自分の弱さと向き合うためだったのか。
今も攘夷志士として、軍医として皆の傷を癒し、幕府や天人に逆賊や死神などと罵倒されようと、必死に戦ってきたのは、愛すべき者を救えなかった分、自分のできることをやろうとしているのだろうか。
松下村塾では皆に全く無関心だった一匹狼がここまで……
「だが、その弱さを分かって今までずっと必死に頑張ってきたのなら、お前の母親殿も、そんな立派になろうとする娘を見て、きっと喜んでいるだろう」
「!」
雅は誰かに自分の母親の気持ちを察されることなんてなかったので、目を丸くした。
桂は彼女の母親のことは知らないし、知ったかぶりもするつもりはない。
ただ、子が努力することを喜ばない親はいないことは知っていた。