第13章 青い髪、赤い血
「別に怒りはしない。高杉はああでも銀時ほど落ちぶれてはいない」
「確かにアイツドSだから、SMプレイが好きそうだな。患者が女医を催眠で操って、無理やり犯すみたいな奴」
ズコォッ!
自分を示唆するかのような発言に、桂は思わずすべった。
「あれ?図星だった?」
「き…貴様。そんなふしだらな言葉や知識まで……」
雅は小柄でチビだが銀時たちよりも年上設定。
「人を見た目で判断しない方がいい。戦でも敵への先入観は命取りになるよ」
一見、無垢で純粋な少女だが、残念ながら職業柄で知っていた。
「アンタだって、松下村塾で隠れてエロトピアやら何やら読んでたでしょ。銀時には下らないって言ってたのに、自分だけ棚に上げて……」
「も、もうこの話は終わりにしよう!おまえが元気なのは十分に分かった!」
何か弱み的な物を握られてしまった桂である。
「しかしそんなこと、男の前で言うものじゃない。上品なお前がそんな下品な言葉。キャラ崩壊騒ぎだ。お母さんが聞いたら何て嘆くか…」
雅は目をそらした。
「あいにく、お母さんはもういない」
「!」
桂は地雷を踏んでしまった気がした。
(高杉の話で、てっきり元気になっていたのかと…)
いや、松下村塾に入った成り行きを考えたら、雅の母親は…
デリカシーには気を遣っている性分なため、すごく悔いた。
「す、すまなかった…」
「いや、幼い頃に両親を亡くしたアンタに比べたら…それに銀時も……」
「……」
実際ここにいる大半は、両親がいないかそれか折り合いが悪い者が多い。
鬼兵隊に所属する三郎という男が、父親と親子喧嘩して戦に出たと言っていたのを、雅は以前聞いたことがあった。
桂は幼くして亡くした。
高杉はそりが合わなく勘当された。
そして銀時は恐らく戦争孤児で、松陽に拾われて育てられた。松陽が親代わりだった。
要するに、ここにいる誰もがワケアリだ。
「……差し支えなければ聞きたいが、お前の母君はどんな人だったのだ?」
「!」
桂は松下村塾にいた頃からずっと気になっていた。
彼女が銀時と同じく拾われた身の割には、立ち振る舞いがお上品なところが。
足音があまり立たないきれいな歩き方。着物もシワがなく、手入れもしっかりしている。
まるで松陽みたいに。