第13章 青い髪、赤い血
「そばにいたい?おそば?」
「食べ物に絡めないと会話できないのかなアナタは?」
ほっぺを軽くつねって伸ばした。
「や、やへへほ(やめてよ)」
母親は訂正した。そばとは隣という意味だと。
娘は3歳のおつむを絞るくらい熱心に考えに考えた。
「でも私、今のままで十分幸せだけどな」
「それでも、アナタは将来そういう人を作れば、きっと人生も楽しくなるわ。アナタはどんな人と結婚したい?」
母親は恋バナにヒートアップしていき、娘の頭がこんがらがった。
3歳児には早い質問だったが、娘は何とか結論付けた。
「じゃあ私、父さんみたいな人と結婚したい」
「アハハハ。それを聞いたらあの人きっと喜ぶわ。早く帰ってこないかしらね」
娘のほっぺをスリスリと触り、娘もまた笑った。
「ねえ、昔話をしてよ」
母親が寝る子によくするあれだ。
「しょうがないわね。じゃあ終わったらちゃんと寝るのよ」
「うん!」
子供は布団の中で胸が高鳴り、母親は一言一言を口にし出した。何かを思い出しながら。
“これはね、幽閉されたお姫様と名前が無かった一匹狼が出会うお話よ”
~~
現在
「あー暇だ」
今は大体、午前9時過ぎ頃。
(あの時はまだ今よりも小さかった雅は、布団の中でゴロゴロしてます…)
昨日、高杉に自粛命令を下されたことにより、私は部屋にいた。
母親に添い寝してもらったときとずいぶん違う。
あの時の私は本当に何も知らなかった。まだ子供だった。まさかこんなに……
「布団の上でゴロゴロするのは、予想以上に暇とは」
今頃だったら私はケガした人たちのそばにいるのにな。
「……」
寝返りをして体勢を変えた。
(今思えば、実に皮肉だな。父がかつて参加した戦争に娘も参加するとは……)
子は親に似るとはこのことか。
結局、父がなぜ戦に出たのか理由は知らなかったが、母が言ったように、きっと人助けがしたかったんだろう…
(このままゴロゴロしているのも何だから、せんせーがくれた医学書でも読むか)
トントン
「!」
部屋の外で誰かが戸襖を叩いた。
「どうぞ」
来客は、意外な人物だった。
「ヅラ?」
「ヅラじゃない。桂だ」