第11章 二度あることは三度ある。いや四度あるかもしれんから気ィ付けろ
高杉は雅の日頃の癖のようなため息を吐いた。
「とにかく俺は雅を護りたい。女だからではなく、1人の友として。普段お前が雅を気にかけるように、俺もお前と同じ気持ちだ」
「……俺もそのつもりだ」
高杉は明日の戦の準備もあるので、自分の部屋に戻った。
(同じ気持ち?それは少し違うな。口では絶対に言えねーが、俺の方が上だ)
この先何があろうと、“アイツ”自身が望まないだろうと、俺が必ず護る。
その覚悟くらいしてらァ。
「……」
(高杉の奴…やはり雅のことが……)
桂は離れていく高杉の背中を眺めながら何かを察していた。
高杉は、雅の話になるといつも以上に真剣に聞く。
通りすがるときも、誰よりも彼女を視線で追っている。
何より、普段ふてぶてしい笑顔を見せるアイツが、雅の前では朗らかな笑顔を見せる。
(高杉がもし道を踏み間違えたとしても、アイツがいてくれれば……)
雅を失うわけにはいかない。
戦力としてだけではない。たとえ戦が終わったとしても、きっと俺たちの支えになってくれるはずだ。
特に、高杉にとっての……
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高杉はお尋ね者の張り紙の看板を眺めていた。
お尋ね者の名は“平賀源外”。
夏祭りでカラクリ技師として花火の打ち上げ披露に装い、将軍の首を狙ったことにより指名手配となった。
その裏で高杉もつながっていたのだが、銀時によって阻止されてしまった。
「どうやら失敗したようだな」
「!」
僧侶姿に変装している桂が後ろから声をかけた。
「思わぬ邪魔が入ってな……牙なんぞとうに失くしたと思っていたが、とんだ誤算だったぜ」
「何かを護るためなら人は誰でも牙をむこうというもの。護るものも何もないお前は、ただの獣だ…高杉」
「獣でけっこう。俺は護るものなんぞないし、必要もない。全て壊すだけさ。獣の呻きが止むまでな」
高杉の遠ざかる背中を眺めた。
(だが、“昔”のお前にも、ちゃんとあったはずだ…高杉)
昔の仲間とその風景を思い出し、空を見上げて思った。
(お前がいなくなってから、アイツは随分変わってしまったぞ…雅)
もしお前が生きていれば、アイツに何と言う?
お前だったら、アイツを…