第11章 二度あることは三度ある。いや四度あるかもしれんから気ィ付けろ
「医者とは人の命を預かる身だ。弟子の命も責任を持って預かるのは、医者に限った話ではない」
「……」
この時、桂と高杉は同じ事を考えていた。
“自分たち”(弟子)を守るために、自ら天導衆に捕まった“松陽”(先生)のこと。
そしてこの戦は松陽を奪還するためのもの。
「そんな人がまだ十ほどの童だった雅を放っておくワケがない。きっと何らかの事情があって雅を引き離したんじゃないかと俺は考えている。その者が今どこにいるのか。それともまだこの世にいるのかは知らんが」
本人の彼女はそんなこと話してはくれないが、同じ師を仰いだ者同士であるから、桂はそれくらいの予想はついた。
雅の腕を見れば、その師の力はどれほどのものだったか、想像に難くない。
だが、大きな力を持つことは時に、大きな責任を負うことでもある。
その責任から弟子を逃がすために、恐らくその人は……
「独りさまよっていたところを、松陽先生に拾われた。銀時と同じように、きっと辛い思いをずっとしてきたのだろう。もしかしたら、自分の師の背中を、ずっと前から追いかけ続けているかもしれんな。今の俺たちのように……」
「……」
隣で寝そべっている銀時は、実は起きていてその話を静かに聞いていた。
密かにこう思っていた。
確かに、ヅラが言ったことは正解だ。
周りの人間は自分を“鬼”呼ばわりする連中ばかり。
手には血にまみれた棒切れ。
確かに俺はあの時、まるでかつての自分を見ているようだった。
だから放っておけなかった。
あのめんこいツラに血ィまみれた青鬼を。
銀時が起きていることに気付かず、桂は話をそのまま続けた。
「大変な思いをしてきたからこそ、人は優しくなれる。だがそれは時に、己の身を滅ぼすほどの脅威となりえる。辛い思いをしてきたからこそ、並大抵の不幸にも怯まない。無茶を無茶だと思わない精神を持ってしまったのかもしれない」
桂は雅のことをよく知っていた。
最近の付き合いでは高杉の方が多いはずなのに。
高杉はガラにもなく、少しだけ羨ましくなった。
「松陽先生は雅のそんなところも心配していた。だから俺は、先生がやっていたことを代わりにやり続けたいと思っている。この先も」
「ヅラ…」