第11章 二度あることは三度ある。いや四度あるかもしれんから気ィ付けろ
しかし、幕府でさえ知り得なかった秘密を、なぜただの小娘1人が知り得ているのか。
「我々幕府軍や天人に比べれば、向こうの武力は天と地の差。なのにここまで戦が長引くのは、特別な医術を持つ者により、反乱軍傷の治りが並外れているから。その死神にも、あの男ほどの術を持つのであれば辻褄が合う」
「……」
朧はあの山で、死神が高杉の腕を治療するところも見ていた。
麻酔薬を使って傷を縫合する。最初から最後まで。
(2人の大罪人の師を持つ女軍医。あの時の青髪の女童。己の弱さで無様に嘆き泣いた青鬼が、あそこまでになるとは……)
「何がともあれ、あの者を含めたもののふ共は吉田松陽の弟子」
「我々の悲願の障壁となる者は、何から何まで排除するまでだ」
「天に逆らう哀れな虫どもに、文字通り天罰を下すのばそう先のことではない」
こうして、天導衆の集いはお開きとなった。
拠点にて、
負傷者たちが横たわっている大広間で、高杉は彼らの様子を一通り見ていた。
雅と一応約束したから。
「今日はまたずいぶん珍しいな。お前がそんな仕事熱心とは」
桂も負傷者の1人だった。
傷が痛んでる様子もなく体を起こして、高杉に気軽に声をかけた。
「よぉ、ヅラ。そこの隣のバカは相変わらずアホ面で寝てんのか?」
「ヅラじゃない桂だ。銀時はこの通り夢の中さ」
周りで寝ているけが人を起こしそうなくらい大きないびきをかいている。
「全く。美しさの欠片もない男だ。お前の方は今日腕をやられたようだな」
「……なあヅラ。明日、雅の様子を見てくれねえか?」
明日は桂と銀時は負傷により戦には出ない。
だけど、歩き回るくらいのことはできる。
雅が自分の容態など構わずうろうろしないよう見張ってほしいと頼んだ。
「あ、ああ…それほど言うということは、アイツもかなりなケガを負ったということなのか?」
「「大丈夫だ」っつってたがアイツ、自分の立場に責任感じて無茶してんでな」
もし誰かに襲われたらマズいとも思って、そこで一番疚しくない&人妻好きのヅラなら大丈夫だと判断した。
「確かにアイツには急速に休息が必要だな。あ、別にダジャレのつもりで言ったわけじゃないぞ。もし笑うなら周りの皆を起こさない程度にしてくれ」
「安心しろ。面白くもなんともねェから」