第11章 二度あることは三度ある。いや四度あるかもしれんから気ィ付けろ
(何やってんだろうな、俺)
今更そんなことを思った。
今やってることは、外道かもしれない。最も犯しちゃいけねェルールを破ったかもしれない。
だがそれでも、コイツに必要なことだと思った。
唇の表面で触れあうようなキスから、雅の口内に舌を入れ込んだ。
呼吸させる隙も与えないくらい手加減なしで。
頭を抑えているから、抵抗されても離れない。
雅の舌に触れた途端、乱暴に絡めた。
角度を変える度に、唇同士が触れ合う卑猥な音が聞こえる。
仰向けになってる雅の口の端から、どちらかのか分からない唾液が伝った。
こんな状態にも関わらず、掴まれた腕も絡まれている舌も、何一つ動かそうとはしない。
さっきは腕をはらったのに。
(コイツ…)
右手でわき腹から上までスーッと撫で胸に触れたが、それでも抵抗してくれなかった。
(何で、なんだよ……)
高杉は唇を離し、互いの舌先で糸を引いた。
しばらく呼吸ができなかったから、2人とも息を切らした。
「ハァ…ハァ……」
雅の顔もその瞳も、相も変わらず無を表していた。
スッ
「!」
雅はついに腕を動かしたが、それは高杉の腕を振り払うためではなく、左腕の縫合に触れるためであった。
傷を心配するために。
(こんなことされてんのに、何で…だよ)
首筋に噛むに近い口づけをした。
「ッ…!」
襲われても構やしねェ?実際に取り返しのつかなくなるところまでやられたらどうなってたんだ。
口で言うのは簡単だが、実際やられて後悔することだってあらァ。
だから俺は、嫌われてもよかった。
ただ抵抗してほしかった。「やっぱり嫌だ」って危機感を覚えてほしかった。
首筋から唇を離した。
「これで、あいこだ」
こう言えば、コイツはあの時の決闘と同じだと思うんだろうな。
何でそんな平気でいられる?
こういうのは、好き同士でやるもんなのに。
どうしてお前は、そうなっちまった?
「!」
高杉は雅の上からどいて、部屋を去り際一言残した。
「明日、また約束破ったら許さねェからな」
バタンッ
「……」
雅は独り部屋を取り残され、無音が強調される。