第11章 二度あることは三度ある。いや四度あるかもしれんから気ィ付けろ
何されても?
「てめェそれは、襲われても目ェ瞑るって言ってんのか?」
「……さっき言ったように、この場に私がいる時点で私には落ち度がある。そんな風に見られるのも仕方ない。特にこの環境下では。接吻されようが胸触られようが、私の責任だ」
ガッ
高杉は雅の陣羽織の襟を掴んだ。
正直こんなことしたくなかったが、どうしても許せなかった。
自分を大事にする欠片もない雅のことが。
男が女に求めるのは生理現象であり、仕方ないことだから不問にする。何て秩序もない不条理な考えだ。
「まさかお前……すでにさっきみてェに襲われたことあんのか?」
「いやない。でもそうだとしても仕方ないことだ」
「仕方ない、だと?どう考えてもてめェが被害者だろ」
高杉は襟を掴む力を強めたが、雅は表情を変えなかった。
その目はまるで昔のようだった。
声は出さなくとも分かるくらい、どうでもいいと言っているような目だった。
高杉は一番聞きたくないことを雅に聞いた。
「まさかとは思うが、襲われても別に構わねえと思って、俺を部屋に誘ったのか?」
窓から見える夜桜。
煙管の煙のにおい。
戦とは全く違う、狭くて静かで和やかな空気。
雅の柔らかな表情にその優雅さ。
高杉にとって、この時間と空間は決して悪いものではなかった。
あの無愛想な雅が自分の部屋に招き入れるのは、仲間として信頼されているからだとずっと思ってきた。
でも今は、それを疑ってしまう。
「そういうつもりじゃないよ。ただ、
アンタにそうされても文句は言えない。山ですでに私がやったから」
ダンッ!
高杉は雅を床に押し倒した。
頭を打たないように片手で雅の後頭部を抑えて、もう片方の手で腕を固定した。
しかし雅は抵抗するどころか指一本も動かさず、表情さえ変えなかった。
「てめェは危機感が無さ過ぎだ。男をなめきっている。本当に医者か?さっきももし俺が来なかったらてめェ」
「私は別に平気な……」
高杉はうるさい口を口で塞いだ。
襲われたこと無いんだよな?
だったら、教えてやるよ。
危機ってやつを。