第11章 二度あることは三度ある。いや四度あるかもしれんから気ィ付けろ

『一緒にするな。人殺し』


雅が“アイツら”(天導衆)に向けて放った言葉。

彼女は松下村塾から、何にも染まらない“無”のような存在だった。

誰にも干渉せず、誰にも左右されない、小さな一匹狼だった。

そんな無色の奴が初めて露わにした私情。“恨み”という呪い。

「……」

「あん時のてめーは明らかに冷静さを失っていた。てめーをそこまでにしたアイツらは何者だ？松陽先生を奪ったアイツらのことを知ってたのか？てめーはアイツらに、
・・・・・・・・
誰を殺されたんだ？」

高杉の問いに雅は目をそらした。

「……アンタには関係のない話だ」

「じゃあ無理に詮索しない代わりに、明日は絶対安静にしろ。てめーが我を忘れて無茶した結果がこれだ。たまには他の奴らに任せろ」

高杉は雅の肩に手を置いたが、彼女はそれを振り払った。

「！」

「勝つためには、それなりの無茶が必要だ……たとえ私が無茶しても、その代わり無茶しなくなる人がいるのであれば、安いものだよ…」

雅の頭の中には、勝つことしかない。勝つためなら何でもやる。

その執念の起因はあの烏共。天導衆。

高杉は分かってきた。昔は勝ち負けに無欲だった彼女が、どうしてそこまでこだわるのかを。

同時に、彼女が目の敵を前にして、いつもより冷静さをかき、無茶していることも分かった。


「それに『無茶しねーと、果たせねェことだってある』って言ったのは、どこの総督？」

以前、鬼兵隊との出陣の際、高杉は確かに言った。その後、足の傷に負荷がかかって悪戦苦闘もした。

だが、

「俺とお前じゃ立場が違う。お前はこの場において絶対失っちゃいけねェ奴だ。ヅラもよくお前に言ってるだろ」

「私は無茶しても問題ない。だって……」

雅は“それ”を話すのを危うく止めた。

「とにかく、私のやることに邪魔しないでほしい。あとは何されても咎めはしない」

「！」