第4章 疲れたときほど甘いものはウマい
「………」
彼女は撫でられても特に抵抗もしない。
若干安かな表情になっていた。
髪など外見のお世辞を間に受けるのも、やはり意外と乙女なのか。
高杉はその表情も目にした。
銀時の手が頭から離れ、雅は乱れた髪を直した。
「なあ」
急に高杉が声をかけた。
「何?」
「お前…」
「おい。お前たちそろそろ行くぞ!」
タイミングが悪く、桂が高杉含め攘夷志士皆に出発を言い渡した。
そろそろ援軍を迎え入れる時間だ。
「分かった」
「…ああ」
この時、高杉が軽く舌打ちしてたのは誰も知らない。
そして浜辺。
到着して間もなく、大きな軍船が水平線から見えてきた。
話によれば、今回来る援軍の人はちょっと変わった人らしい。
生まれは土佐。商家で今回の戦のキーマンだと。
(どんな男だろうな?)
雅はその商家を心待ちにしてた。
あの彼女が他人に興味を持つなんて珍しい…いや、そうではない。
戦となれば、負傷者の治療に使う医療薬品や器具は必需品。
この軍の人数を考えれば、莫大な量が必要。
それを可能にする唯一の存在がその男なのだ。
その人自体に興味はなく、その者が“商人”であることが重要だった。
だからそれ以外で深く関わるつもりはないと、彼女はこの時そう思っていた。
目を凝らすと、軍船の船首に誰かが立っていた。
「あれが南海の援軍 桂浜の龍。坂本辰馬か」
「桂浜じゃない。桂だ」
「誰もてめーの話はしてねェ」
(誰もアンタの話はしてない)
隣合わせにいる高杉と雅は、同じとこでツッコんだ。
「気に食わねェ」
『?』
後ろから銀時が、確かに気に食わなそうな顔で来た。
「ボンボンとは気が合わねェ。苦労知らずの甘ちゃんの独善的な勘違い野郎なんて、どっかの武家の長男だけでたくさんだろ。長男ていうか短男だけど」
この時点で雅は悟った。
「どうせあの船もパパから買ってもらった玩具だろ。
どっかのチビがレゴの兵隊パパから買ってもらって、総督気どってんのと同じだろ。ミニ四駆のコース ダンボールで作ったことねーんだろ。
言っとっけど、てめーらが人生ってコース順調に走れてんのはパパがコース買ってくれたおかげだから。パパがスゲーだけだから」
匿名の意味なくないか?