第11章 二度あることは三度ある。いや四度あるかもしれんから気ィ付けろ
「どういうつもりなの?」
「どうもこうもあるか?俺はてめェが休むなら文句は言わねェと言ってんだ」
ハァ
その言葉。ブラック企業にいる非正規雇用者にとっちゃ、どれだけ救われる言葉か。
だが、今の私にとっちゃ、余計な横やりだ。
「私がこうしている間にも、療養中の隊士たちは痛みと戦っている。薬を使ってもなお苦しんでいる者がいる。軍医である私が、少しでも彼らを診る義務がある」
何よりも、私が一時拠点を空けてしまってこのザマだ。
よりによって今日は被害が大きい。
攘夷四天王の半数が重傷。脳心まで張り付いているバカは、元から手の施しようがないが。
自分のミスは自分で拭う。
「だが、軽い診察くらいは他の奴らでもできるはずだ。逆に俺の肩でバナナの皮みてーにあんなしおれてたお前が来たら、怪我した奴らも驚くだろ。俺以上にお前を止める」
「…確かにそうだな、分かった。アンタに免じて今日は部屋にいよう」
なら今日空けたツケは明日埋め合わせることにすればいい。
これで納得してくれるはずだ。
「あと明日も止めておけ」
「!」
高杉はあの小刀を差し出して、雅はそれを受け取った。
「それは…戦のこと?」
「一日寝たからって、剣の腕が鈍るわけでもあるめー。無論、いつもの仲間の手当てもするな。寝てろ」
随分でかい態度。アンタは昔からそうだな。
銀時には「チビ」と罵られているが、本当にその頑固さはデカいな。
「百歩譲って明日の戦には出ない。だが軍医としては戦わせてもらう。それに人の話はちゃんと聞いておいた方がいい。私は明日になれば全快だ」
「…俺はてめーがあんな苦しむところ、もう見るのはゴメンだ。明日は休め」
お互い鋭い目つきで睨みあった。目をそらせば負けになるような。
「……たかが死にそうになっただけで何だ?それが戦だって、アンタもよく知っているはず」
戦場で苦しまない奴なんていない。
幼なじみだからって、私を特別視するのは止めてほしい。
もし仮に立場が逆なら、私はアンタを止める気はないのに。
「この戦は私の戦いでもある。自分の戦いに命懸けることがそんなに悪い?」
「…それは“アイツら”を倒すことか?」
!
雅は怒った顔から面を食らった顔になった。