第11章 二度あることは三度ある。いや四度あるかもしれんから気ィ付けろ
「…嘘はついてない。もう休んだから大丈夫だと判断しただけだよ」
「たった3分でか?カップラーメンかお前は」
「カップラーメンといったらどん兵衛よりも吉岡里帆を食べたいなって銀が言っていた」
「何の話だ?アイツは今関係ねーだろ。本題逸らすな」
高杉の声は段々と低くなり、緊張感も増してきた。
雅は話しながら、けが人の元へ足を運ぼうとするも、高杉が前に出て阻んだ。
「やっぱりてめェ、ハナから…」
「……」
雅はため息をついて困り顔になった。
(ため息つきてーのはこっちだ…)
「すると何かい?さっきの“薬の副作用”なんて言ったも嘘か?」
「違う。さっきのは嘘じゃない」
「じゃあ今のは嘘確定だな」
「あ」
雅は自分の頭をかいて、高杉をまく方法をとにかく考えた。
「皆の容態を軽く見るだけだ。銀とヅラの様子もまた診たいから」
「そんぐらい俺がやらァ。あのバカ共は気が乗らないが、ちょうどアホの寝顔を見たかったところだ」
何を言っても、高杉はなかなか引き下がらない。
まるであのときと同じだ。決闘を申し込まれたとき。
『俺ともう一度勝負しろ』
『もしやらねーってんなら、お前の昨夜のことバラしても構わねェんだぜ?』
口喧嘩とは裏腹にそんな郷愁に駆られた。
(そうだ。ずっと前から知ってたじゃないか)
コイツの諦めの悪さは、太鼓の達人の鬼レベル。まさに鬼の兵隊の総督に相応しいほどの頑固さ。
白シャツにカレーうどんのシミくらいの頑固汚れだ。
(悪徳訪問セールスに引っかかっている気分だ…)
「てめェはいつも独断専行だから少しは仲間の言うことも聞けよ」
「……」
雅はなかなか首を縦には振らない。
高杉という障壁をかいくぐろうとしても、なかなかできない。
黒子野が教えてくれたミスディレクションをしようにも、この何もない廊下では使えない。
「ていうか、お前が一番検診されるべき患者だろ。今日くらい休んでも問題ねェだろ」
「……自分の容態くらい、医者である私が判断する。素人のアンタの意見は必要ない」
ひょい
「!」
高杉は雅を抱えて、部屋に無理やり戻らせた。
「ちょ…」
バタン
襖を閉めて立ちふさがることで、雅を袋の鼠にした。