第11章 二度あることは三度ある。いや四度あるかもしれんから気ィ付けろ
高杉が毒を吸い出してくれなかったら、特定することはできなかった。
アイツらとまた戦うときのために、何とか“毒”を特定しなければならなかった。
「……お前、俺に感謝してんのか?」
「…要約すればそういうことになるね」
(普通に「ありがとう」って言えや。要約するほど難しくもねェだろ)
(でも私は、高杉に強引なことをやってしまった。もし逆にやられても、文句は言えないな)
「話はこれでシメにしよーぜ。続きはまた今度だ。俺もその敵について知りてェことがある。
あと、てめーはもう休め。医者じゃねェ俺でも、今のてめェには安息が必要なのは分かる」
「……分かった」
(あれ、ずいぶんと今日は聞き分けがいいな)
普通の会話なのだが、高杉は妙な違和感を覚えた。
いつもなら、人の忠告を素直に受け取らない奴のはずだ。特に、休むことに関しちゃ。
今回で自分の無茶さ加減に懲りたか?
「じゃあな」
高杉は雅に背を向けた。
「……晋助。私の部屋に来るのは、控えた方がいいかもしれない」
ピタッ
高杉は足を止めた。
「周りがアンタを誤解をすることを、最近になって気付いたんだ。私の軽率な判断で。悪かった」
「……いや。俺も同じ事を考えてたさ。お互い様だ」
高杉は部屋を出た。
少し歩いたところで、また足を止めた。
(……まさかな)
雅の部屋に向けてUターンした。
羽織りの忘れ物を取りに行くためではなく、
・・・・・・・
確認するために。
部屋には入らず、部屋のそばの廊下の死角で待ち伏せることにした。
「!」
雅が部屋の襖からひょっこり顔を出して、左右を4回くらい確認した。
いつも冷静な奴がそわそわそしていて、その仕草がちょっと可愛いらしかったが、そんなこと考えている場合ではない。
(勘が当たっちまった…)
雅は部屋から出て、廊下を静かに歩いた。
(もう…アイツはいないみたいだな…)
「何そんな落ち着かねェ様子で廊下前進してんだ?」
「!!」
後ろに高杉がいることに気付いて、思わず距離を置いて身構えた。
「だ、騙したの?」
「それはお前だ。俺は休めと言ったはずだが。嘘ついたな」
高杉は怒っていた。