第11章 二度あることは三度ある。いや四度あるかもしれんから気ィ付けろ
「私はヅラたちの反対を押しのけてここにいる。だからこれは私自身の責任であり、アンタが咎める必要はない」
じゃあ何か?何されようが知ったこっちゃねーってか?
コイツはガキの頃から無感情だったが…
(いや待て。じゃあコイツが俺を平気で部屋に誘ったのは……)
まさか…
「と、とにかくさっきは何やられた?って聞いてんだ。まさかまた……キスされたのか?」
「え?」
高杉は雅から背を向けて話した。
自分からその話題を振るのがすごく心やましかったから。
あの時の感触を思い出してしまう。
「いややられてない。ていうか「また」って、山では私が…」
「あー、それ以上言わなくていい」
雅の顔を見ることさえも難しくなってきた。
(それを平然と言いのけるこいつァ、やっぱり…)
また思い出しそうになり、自分の頭をわしゃわしゃした。
「……でも…私は戦に勝つためにここにいるのに、こんなことで頭抱えて悩んでるなんて、馬鹿らしいと思うよ」
「!」
振り返るとそこには、沈んだ顔の雅がいた。
「こんな苦境の中だからこそ、皆、幻想を見ようとするんだ。私などに好意を寄せるという愚かな幻を見るんだ」
「!」
この場において女は唯一私1人。意識してしまうのは仕方ない。
私しかいないから、私に対して一時の感情に浮かれてしまう。
辛い思いをしてる対価として、快楽を得ようとする。
他の人たちにとって、私は都合のいい相手にしか過ぎない。
「辛い現実から少しでも逃げようとするために、何かを利用して誤魔化す。欲を“私”(女)に向ける。幻想に浸る。でも、私はそんな茶番に付き合う気はない……」
「お前…」
雅は、“自分の責務”(治療)に支障をきたすからだと、今までも隊士からの告白を断ってきた。
高杉は雅の言うことが理解“は”できた。ただ1つだけ、彼女の言うことは間違っている。
(少なくとも、俺は幻想なんかじゃねー)
ガキの頃から、ずっと気にかけていた。
松陽先生の頼みから、自然と自分の意志へと変わっていった。
これは紛れもなく自分の意志だ。