第11章 二度あることは三度ある。いや四度あるかもしれんから気ィ付けろ
その様子から何かよからぬことをしようとしてたのは明白。
最初から何も企んでいなければ、動揺なんてしない。
「さっさと答えろ」
怒った高杉がさらに問い詰めようとするも、雅が立ち上がって隊士と高杉の間に入りこんで止めた。
(雅?)
雅は高杉に背を向けて、隊士を前にした。
「さっきアンタが言ったこと、ここで口外しても構わないんだよ」
「!」
「それが嫌だったら、早くここから出た方がいい」
低い声にいつもの冷ややかな目と高杉よりも強い圧で、その隊士は雅の部屋からそそくさと出て行った。
そして、高杉と2人きりになった。
「お前。大丈夫か?」
「……」
数分前、
トントン
襖がノックされた。
「誰?」
戸を叩く主は、晋助じゃなかった。
「アンタは……」
先日、5発弾丸を撃たれても命が助かったあの隊士だった。
「雅さん。すいません。部屋に押し掛けたこと、お許しください。あの、大丈夫ですか?」
「……寝たら治る。そーいうアンタの方はどうなの?」
「はい。もうすっかり治りました。あれほどの重傷から助かったのは奇跡です。全て、アナタのおかげです」
「……その言葉は医者として光栄だな」
隊士は雅の部屋に入って、正座をした。
「雅さん。実は、先日の件ですが…」
「……」
雅も予想はついていた。
彼女自身が話を始めた張本人でもあったから。
彼の友人は、右腕を接合した影響で、もう二度と剣を取れなくなる。
日常生活が送れるまで回復するには、相当なリハビリとそれを支えてくれる相棒が必要なのだ。
友人には身内がいないことから、それに適任なのは彼しかいない。
友のために戦を去るか、国のために戦に出続けるか。その二択。
雅はどちらになろうと、否定はしないと決めていた。
「俺…やっぱり…戦に出ることに決めました」
「……」
「やはり、俺1人が逃げるわけにはいきません。確かに雅さんの言う通り、俺にとってダチはかけがえのない存在。助けたい気持ちもあります。
でも、きっとそうすれば、戦を放棄したという自責の念にかられて、結局は自分を殺すことになるでしょう」