第11章 二度あることは三度ある。いや四度あるかもしれんから気ィ付けろ
(アイツらはきっと大丈夫だ。今一番ヤバいのはてめーじゃねーか。雅)
医者の立場だから、ケガした奴らを心配するんだろーが。
“てめー”(自分)が先におっ死んだら、元も子もねェだろ。
高杉は雅が手当てしてくれた左腕の縫合に触れた。
(……アイツはもう少し、
自分に優しくなってもいいんじゃねーか?)
負傷者が寝ている広間で、何やら話し声が聞こえてきた。
(ヅラの声か…やっぱり帰ってたんだな…なら銀時もいるはず)
話せるくらいの気力はあるっつーことか。
「俺、銀時にこないだのヤクルコ、108円とられたんだけど、お前らもとられた?俺だけとられていたら納得いかないんだけど」
「え?わし540円とられたけど、108円じゃったんかアレ」
いや、何の話してんだアイツら?!
(雅が大変なときだってのに。やっぱりケガよりも頭を先に治すべきだったか)
これだったら、雅の手当してた方がよっぽど良かったぜ。
ただアイツからの頼みだったから、断れなかった。
そして高杉は訂正を加えるために、皆の前に姿を現した。
「アイツがそんなマネするワケねーだろ。
てめーらにヤクルコおごったのはこの俺だ。アイツ一切金払ってねーぞ」
高杉は呆れて部屋を出た。
「待ってください総督!雅さんの、雅さんの容態はどうなんですか?!」
鬼兵隊の1人が慌てた様子で聞いてきた。
「……山で敵の奇襲にあって、アイツも傷を負った」
「え!じゃあ……雅さんはしばらく、戦場だけでなく負傷者の治療からも離脱すると?」
「!。まだそれは分からねェ。とにかく、アイツを絶対安静にさせることには変わりない」
高杉はそう言い残して、普段着の和服に着替えに行った。
左腕から先に陣羽織を脱いだが、縫合した部分が張って痛みが生じた。
「痛ッ…」
傷口から包帯を通り越して血がにじみ出てきた。
(……アイツの痛みは、こんなもんじゃなかったろうな)
心臓あたりを抱えて、立つこともできなかった。
あんなに苦しんだ雅は初めてだった。
(もし、毒に刺されて動き回らずすぐに治癒していれば。もし、俺の手当てじゃなく、自分の手当を優先していれば…)
アイツが苦しむことはなかったかもしれねェ