第11章 二度あることは三度ある。いや四度あるかもしれんから気ィ付けろ
いつも冷静で弱みを見せない彼女が、ここまで弱っているところを見たことがなかったから。
「何があったんですか?!」
「話はあとだ。あと、山には近付くなと他の奴らにも伝えとけ」
高杉は雅を部屋に連れて行き、彼女をゆっくり下ろして寝かせた。
「ウ……」
おでこに手を当ててみると、さっきの微熱は消えていた。
(熱はねーみたいだな)
だが、苦しそうなのは変わらなかった。
背負ってた時はあまり顔色は伺えなかったが、今でも体内に残った毒で辛そうにしている。
そしてつい彼女の唇の方に視線を向けてしまう。
「……」
スッ
おでこを触った手で雅の前髪に優しく触れた。
「くすぐったい」
「!。あ、ああ…悪ィ」
高杉は慌てて手を離した。
「すまなかった…ここまで運んでもらって」
「俺のことはもういいから、てめェは今日の口数分くらい休んどけ」
熱冷ましに水桶とタオルでも持ってこようと立ち上がった。
(他にできることはねェか…)
雅に聞こうとしたら、その本人の方から高杉の袖を掴んで呼び止めた。
「なら私のこともいい。ホワイトデーの差し入れもいい。それより、銀時たちの様子を見に行ってほしい」
いやホワイトデーは何も言ってねーが。期待してたのか?
「あのバカ共は心配ねェだろ?」
鬼兵隊の部下から、銀時たちは重傷だが命に別状はないことは聞いていた。
(アイツらは元々、脳ミソの芯から重傷だ。アイツらの異常なしぶとさは、てめェも織り込み済みのはずだぜ)
それに他の仲間が今頃、アイツらの面倒見てるから必要ない。
何より、一番心配しなきゃいけない相手がここにいる。
「晋助頼む」
雅は苦しみながら懇願した。
「……分かったよ」
パタンッ
高杉は部屋を出た。
「……ハァ」
雅はゆっくり起き上がろうとした。
ズキンッ
「グッ!」
しかし体が「止めておけ」と痛みで訴えた。
「…困りものだな。今回は完全に治るのに時間がかかりそうだ」
手足は動かせるけど寝返りは難しい。赤子の頃を思い出すな。あの頃はよく父さんにだっこしてもらったな。
トントン
襖がノックされた。
「誰?」
戸を叩く主は、晋助じゃなかった。
「アンタは……」
一方、高杉は不満げに廊下を歩いていた。