第11章 二度あることは三度ある。いや四度あるかもしれんから気ィ付けろ
後ろを振り向き雅に向かって言った。
「さしずめ俺は、山へ芝刈りに来た爺さんか何かか?」
「それはない。アンタはそんな雑用を引き受ける快い優男夫の性格じゃないし、私より年下だから」
「たった2つくらいだろ。しかも今俺のことディスんなかったか?」
「やられたらやり返す。倍返しだ」
高杉はため息をこぼした。
「そんなことくっちゃべれんなら、てめーの言うとおり大丈夫か」
なんて言ってるのに、高杉は雅を離す気配は全くなく、足を速めていた。
「ねえ、今は誰かに見栄張る必要もないのに、なんでそこまで強がるの?」
さっきだって、私を離そうとはしなかった。
すると高杉は前を見て私から顔を逸らして、かしこまった風で私に言った。
「俺たちァてめーに借りばかり作ってる。戦が終わった後でも返しきれねーくらいの、でけェ恩がある。“こっち”(俺たち)はいつもてめーに背負わせてばかりだから、たまには背負われろ。俺はお前にそれぐらいしか、してやれねェからな」
「!」
雅は攘夷志士の中で最も優れた軍医。
どこで誰に教えてもらったのかは不明で謎が多いが、この時代を圧倒的に上回る卓越した医術技術を持つ。
優れたものを持つ者ほど、その責任は大きくなる。
それがたとえ、武力だろうと知識だろうと。
高杉は、彼女が人を救う光景を誰よりも見てきたから、そんなことが言えた。
「アンタ……
クサいセリフ言って恥ずかしくないの?」
雅のセリフで、いい感じの雰囲気は壊された。
「う!うるせーな……前言撤回するか?」
雅に言われたことで、なんだか自分も恥ずかしくなってきた高杉。
「降ろしてやろーか?」と言いたいところだったが、彼女の容態を考えたら、
・・・・・・・
いつものようにできなかった。
「いや悪い。アンタがそんなこと言うなんて意外だったから。いつものアンタは、そんな風に自分をへりくだることなんて言わないじゃん」
「!」
彼女もまた、高杉を見てきた。
ほとんどは銀時との喧嘩なのだが。2人は言い争いで本領である負けず嫌いを発揮する。
自分から引かない、相手に弱みを見せることもない、売られた喧嘩は買う。