第11章 二度あることは三度ある。いや四度あるかもしれんから気ィ付けろ
「知らないの?背中や腕に死神がはりつけば、必ず祟り貰うよ。強大なパワーを手に入れる代わりに、痣が見る見る広がって……」
「それ死神じゃなくて祟り神だろ。誰がアシタカだって?」
確かに髪型似てるが。
「てめーのように小さな死神なんて、祟りもらったところで小銭落とす程度の不幸だろうさ」
「小さくて悪かったね。アンタはここで山犬に噛まれて小銭落とせば?」
身長を触れられて、彼女はあまりいい気分はしなかった。
「うちの軍医に死なれちゃ困る。右腕だけでも担げるから休んどけ」
実際雅は女で、サンように身体能力が高い割に身軽だ。
ただ、密着してるから背中に柔らかいものが当たってる気がするのがあれだが。背中調べだ。
(確かに辰馬の言う通り……って何考えてんだ俺ァ)
さっきの後もあって、後ろめたくなってきた。
高杉は軍を率いるリーダーだが、まだ20も越してない青年。若いのに大将なのは、優秀だからでもある。
ただ年頃だからそーいう異性を気にする、いわゆる思春期なのも無理もない。
銀時や坂本の場合、女への欲求はだだ漏れだが。
遊郭へ行くときも、高杉と桂よりも2人の方がノリノリなときが多い。
「?」
後ろからでも分かるくらい高杉がそわそわして、私は高杉の背中で何だろうと不思議がった。
(やっぱり重いのか?)
医者が患者に手を煩わせるなんて、言語道断だ。
「……やっぱ降りる。前、瓦屋根の上でういろう食べて、今日はいつも以上に体が重くて…また今度にして」
「いやいつの話だよ。そんな初期の話、読者はてんで忘れてらァ。そしたらあの甘党銀髪バカは、今頃マツコ・デラックスになってるぜ」
(マツコ・デラックスと言ったら、正直パクヤサの方が心配だが…)
そうこうしているうちに高杉は歩き始めた。
「ちょちょちょっと…」
パサッ
「!」
高杉は私を背負ったまま、私の陣羽織を返した。
「あ、これ…」
さっき、敵の目くらましで川で脱いだやつだ。いつの間に回収したんだ?
「てめェ施術のあといつも忘れるな。まあ今回はヤバかったから無理もねェか」
陣羽織は濡れていた。
「…まるで私、川へ洗濯しに行った桃太郎のお婆さんか何かか?」
高杉は思わず吹いた。
「ハッ。何急にぬかしやがる?」