第4章 疲れたときほど甘いものはウマい
あの夜もそうだった
1人暗い夜、泣いていた
感情を表に出さないアイツが
あの時は、背中を眺めることしかできなかった
あの面を思い出す度、調子が狂う…
あんなん見せられて、
いつも通りに出来るわけねェだろ
それほど、雅の涙は…
現在
〈屋根の上〉
雅は誰かと関わろうとはしなかった
それも自ら望んでるように
なのに、コイツは…
高杉はボーッと思いながら、雅をじっと見た。
「何?」
「いや、お前…髪短いな」
「え、今更?」
何を言い出すかと思いきや、髪型を指摘するなんてベタだ。
確かに、昔は背中まである長い髪だったのに今はショートである。
その理由は、本格的に戦が始まる少し前…
回想
〈拠点〉
その日は、援軍が来ることになっていた
周りの皆は迎えに行く支度をしてた
「今回来る援軍は、大した後ろ盾を持つって噂らしいな」
「一体どんな人なんだろうな?」
戦の緊張感もなく、志士たちは呑気にトークしてた。
「どうせあまちゃんだろ。こんな戦に出るなんて、世の中ベルトコンベアみてーに思い通りに進まねーの。人生甘くねーの」
死んだ魚の目をした銀時は、ボンボンとは気が合わないらしい。
「む?そういえば、雅はどうした?」
桂は彼女が見当たらないことに気付いた。
「身支度とかで遅ェんだろ?女ってのは周りの目気にして化粧とかで時間かけるもんだ」
「おい、知ったかぶりか?アイツはそんなんじゃねーし、てめーのようなのろまじゃねェよ」
聞き捨てならないと、高杉は急に会話に入ってきた。
確かに雅はそういうタイプではないが。
「あ?てめーもアイツのこと知ったかぶりか?
え嘘?高杉くーん。まさか、アイツのこと…」
煽り上手の銀時は、ニタニタして高杉を笑った。
カチーン
「おい。それ以上言えば、向こうの海に突き落とすぞ」
「見苦しいぞお前たち」
こういう修羅場に苦労人である桂はため息をついた。
すると足音が聞こえてきた。
「待たせた」
ようやく本人の登場だ。
「珍しいな。お前が遅……!」
3人は目を見開いて驚いた。
雅の髪が短くなっていた。
「髪切るのに手間取った」
((化粧どころか、散髪してたァ?!))