第11章 二度あることは三度ある。いや四度あるかもしれんから気ィ付けろ
高杉はそのまま押し倒されて、雅が上からさらに深く口づけをした。
唇で唇をこじ開け、舌で舌を絡めた。
(雅…!?止めッ…!)
あまりの状況に高杉は何も言えなかった。いや言えるわけもない。
上から抑え込まれるように強引に唇を塞がれているのだから。
唇の角度を変える度に重なり合う音が、聴覚を刺激した。
唇の端から、どちらかのか分からない唾液が伝った。
「アンタの意志なんか関係ない」と言うように雅は舌を入れて強引に絡んできた。
まるで何かを探るように、奥深くまで余すところなく。息をさせる余裕も与えずむさぼられた。
体の中が熱くなってきた。
思考がままならない中、高杉が感じたのは、雅の柔らかい唇。毒とは全くの別物の甘い感触。
微かに視界には、翡翠色の綺麗な瞳と青い前髪が写った。
雅が唇を離し、互いの舌先に糸が引いた。
「ハァ…ハァ…」
あまり身動きのとれない体を引きずって、高杉の上から降りた。
「グッ……」
“毒は…何となく分かった。だが……”
高杉はようやく息をすることができて呼吸を整えた。口端に伝っていた唾液を拭った。
「ハァ…ハァ…、雅?」
・・
“仕方ない。アレ使うしかない…”
雅は震えた手で医療用ウエストポーチから、注射器を1つ取り出し、蓋を口でくわえて開けた。
「それは…」
雅は毒に蝕まれる感覚をひしひしと体で受けながら、注射針を太ももに刺して、中の液体を体内に注入した。
その途端、彼女の容態は急変する。
ドクンッ!
「!!」
パリーンッ
注射器を手から滑り落とし、ガラスの部分が割れた。
「ぁ……ッ……」
雅は体を丸く縮こまるようにして倒れ込み、声にならない声を出した。
自身の心臓をぐっと手で抑えてさっきよりも苦しみもがいた。
「お、おい!何したんだ?!何入れやがった?!」
解毒薬を入れたんじゃなかったのか?!
ゴホッゴホッ
「!!」
咳と同時に吐血した。
「おまッ!血が…!」
「触…るな」
雅の虚ろな目を前にして、手が止まった。