第11章 二度あることは三度ある。いや四度あるかもしれんから気ィ付けろ
「ッ!自分が死にかけてるって時に、何呑気なこと言ってやがる?」
雅は手を離した。
「手立てが…ないわけじゃ……ない。毒さえ…特定できれば…方法は…ある」
雅は伊達に医者をやってきたわけではない。
元々麻酔薬の原料は、チョウセンアサガオなど毒性が非常に強い植物だ。
だから彼女は“毒”に関して知識はピカイチだ。
(まさか…毒に慣れてる…私で…さえ……ここまでやられるとは。
・・・
今までの中で……相当強い…)
吐き気に腹痛。軽い幻覚も見えてきた。
Tシャツ着た変なゴリラが筆ペン持って畳の上でゴロゴロしている姿が見えてきた。
ああダメだ。このままだと私、確実に死ぬな。
(今持っている医薬品で対処できるか知らん。だがせめて…毒名さえ分かれば…)
天導衆の奴ら。こんな化学兵器を隠し持っていたとは…
死の覚悟なんて、戦いの度に決めている。だけど、
よりによって、
・・・・・・・・
コイツの目の前で、死ぬわけにいかない
「晋助……さっき…首から毒…抜いてくれたとき……変わった味…しなかった?」
変わった?そういや……
「甘ェ味がした。あれァ血じゃねー」
ならかなり絞られる。今の自分の症状に甘い毒物。
私は頭の知識から数十ほどの毒物の目星をつけた。それでも特定するのにまだ範囲が広すぎる。
元凶である凶器の毒針があれば話が早いが、敵の亡骸は全て、いつの間にか消えている。
隠れ潜んでいた敵が、こっそりお持ち帰りしたに違いない。証拠を消すために。私を確実に毒死させるために。
(私が…“研究”でやってきたように……
・・
直接確認することができれば……)
凶器も自白させる敵もない。これじゃ……
(いや…“1つだけ”なら…ある……)
「アンタ……今もその味…する?」
「あ、ああ……それがどうしたってんだ?」
「……ごめん。もう少しこっちに…寄ってほしい」
人差し指を動かす手振りで、高杉を自分に近付けさせた。
(何なんだ…耳元で何か言いて……)
グイッ
雅は突然、高杉の陣羽織の襟を掴んでさらに引き寄せた。
「!!」
は…?
雅は唇を高杉の唇に重ねた。