第11章 二度あることは三度ある。いや四度あるかもしれんから気ィ付けろ
「いやでもこないだヤクルコおごってやったし、アレ引いたら四千円でいいだろ」
銀時がつぶやいた。
「いやでもヤクルコは5個セットで540円で俺がもらったのはそのうち一個だから540÷5=108円で、4500-108=4392だろ」
俺がつぶやいた。
「それ。消費税入ってる?」
銀時がつぶやいた。
こんなくだらない会話をしている間、雅は毒に犯されていた。
夕方頃で段々と日が暮れる。何も見えなくなればさらに状況は厄介になる。
そんな中…
「うッ……」
「じっとしていろ」
俺は雅の後ろ襟を下げて、首元の患部に口で毒を吸い出した。
血液の中に、僅かながら血じゃない独特の味がした。それが恐らく毒だ。
毒ごと血液を口に含んで外に吐き出すことを繰り返した。
毒はすでに全身に回ってる。今やってることは無駄かもしれねェが、やらねェよりもマシだ。
ただ体内の毒を少しでも取り出すことに必死だった。
「もう…いい……」
雅はさらにかすれた声で話しかけ、俺は首元から唇を離した。
「雅……」
さらに呼吸が荒くなっていた。
毒を入れられたのは、刀を折られた瞬間隙をつかれたあの時だ。
苦しそうにしている雅の手を握った。
(何か手立てはねェのか!?)
もし毒を受けたのが雅ではなく俺だったら、コイツの迅速な手当てで何とかなっていたかもしれない。
そんな思いもあったが、ふと思い出した。
「お前の麻酔薬なら、一時的でも痛みが和らぐんじゃねェか!?」
しかし、雅は首を横に振った。
「もう…ない……
・・・・
アンタのが…最後だ」
「!」
(は?コイツ…)
雅は松下村塾にいた時から、賢くて勘も鋭い。毒もやられたときからすでに気付いていたはずだ。
なのに、そんな状態でありながら俺の腕を……
(自分よりも“患者”(俺)を優先したってことか…?)
賢い奴のはずなのに、どうしてこんな時だけ馬鹿なんだ……?
左拳に力を入れた。
俺より、自分を大事にしろや。
こんな時くれェ、職務も責任もそんなのほっぽり捨てて……
スッ
「!」
雅は俺の頬に右手の甲で触れた。
「…そんな顔しないでよ。見てるこっちも…気分悪くする」